1on1を導入したのに、面談が5分で終わってしまう。
部下から出てくるのは進捗の報告だけで、こちらが聞かなければ何も出てこない。
管理職からは「何を話せばいいのか分からない」と言われる。
1on1が機能しないのは、上司の面談スキルが足りないからではありません。1on1をどこに置き、何のために使うのかを決めないまま、実施だけを指示していることが原因です。
この記事では、1on1を仕組みとして機能させるための4つの段階を整理します。会議との役割分担、導入時にそろえるもの、聞き方の見直し、そして定着のさせ方の4つです。私が自分の会社で1on1を導入し、一度失敗してからやり直した経験をもとにしています。
1on1とは、進捗を確認する場ではなく、動けない理由を整理する時間
先に、この記事での1on1の定義をはっきりさせておきます。
1on1とは、上司が部下の進捗を確認する場ではなく、本人がどこで止まっているのかを一緒に整理する時間です。
進捗の確認だけなら、会議やチャットでも足ります。わざわざ一対一で時間を取る理由は、会議では出てこない「なぜ本人が動けないのか」を扱うためです。
一対一で話す時間そのものには意味があります。問題は、その時間を何に使うかが決まっていないことです。
1on1が機能しないのは、上司の面談スキルの問題ではない
1on1がうまくいかないとき、原因を上司個人に求めたくなります。聞き方が下手なのではないか、部下との関係ができていないのではないか、と考えてしまいます。
しかし、私が自分の会社で見てきた限り、うまくいかない原因のほとんどは仕組みの側にありました。目的が共有されていない。会議との違いが決まっていない。導入したあと、やり方を確認する機会がない。この3つが揃うと、面談は形だけ残ります。
上司は、教わっていないやり方を自分で発明することはできません。何も渡されなければ、自分が知っている方法を使うしかない。私の会社では、それは私自身が会議でしていたやり方でした。
だからこそ、1on1は「導入する」ものではなく、段階を踏んで仕組みにするものだと考えています。

段階1|会議と1on1の役割を分ける
最初にやることは、面談の練習ではありません。会議と1on1の役割を分けることです。
ここが決まっていないと、1on1は会議の続きになります。会議で詰め切れなかった未達を、場所を変えてもう一度追及するだけの時間になってしまいます。
私は、この2つを次のように分けています。
- 会議:組織として何をするかを決める場所
- 1on1:本人がなぜ動けないのかを一緒に整理する場所
同じ「実行されていない」という状態でも、扱う場所は変わります。
決めた行動そのものが無理な内容だった、他部門との調整が必要だった、という場合は組織の問題なので会議で扱います。一方、やることは決まっているのに本人が着手できていない、優先順位を判断できずに止まっている、という場合は個人の詰まりなので1on1で扱います。

この線引きがないまま1on1を増やしても、社長や上司の負担が増えるだけで、状況は変わりません。
役割を分けると、会議と1on1は次のようにつながります。
月次会議で決める → 1on1で個人の詰まりを整理する → 次の月次会議で組織の問題として扱い直す
私の場合は、月次会議と次の月次会議のあいだに1on1を置いています。会議で決めたことが動いているかを、次の会議までの間に一度確認できる形にするためです。1on1を会議と切り離した「別の取り組み」にすると、続かなくなります。
▷【関連記事:会議で決めたことが実行されないとき、会議と1on1をどう分けるか】
段階2|導入時に、目的・上司の役割・確認の3つをそろえる
役割を分けたら、次は導入です。ここで私は一度失敗しています。
私は管理職に対して、1on1を実施してくださいと伝えました。目的も、上司が何をする場なのかも、詳しく説明しませんでした。実施すること自体は指示どおりに進んでいたので、しばらく問題に気づきませんでした。
あるとき、ある管理職からこう言われました。
「社長のように、なぜなぜをやっています」
その一言で、自分がしていたことの意味が分かりました。私が会議で「なぜ未達なのか」を繰り返していた姿を、管理職はそのまま1on1に持ち込んでいたのです。教えていなければ、自分が知っているやり方を使う。当たり前のことでした。
1on1が「なぜなぜの場」になると、部下は原因の説明ではなく、責められない説明を用意するようになります。それは、こちらが最も知りたい情報とは逆のものです。
この失敗のあと、私は導入時に次の3つをそろえるようにしました。
- 1on1の目的を共有する(進捗確認ではなく、止まっている理由を一緒に整理する場だと伝える)
- 上司の役割を共有する(追及する側ではなく、状況を整理する側だと伝える)
- 実施したあとに確認する(何を話したか、どう進んだかを見る機会をつくる)
この3つは、口頭で一度伝えるだけでは足りませんでした。伝え方が人によって変わり、また解釈が分かれてしまうためです。
▷【関連記事:1on1導入で失敗した。管理職に伝えるべき3つのこと】
段階3|「特にありません」を、聞き方の問題として見直す
目的と役割を共有しても、面談の場で会話が止まることはあります。
「特にありません」
「問題ありません」
こう言われて、そこから先へ進めない。私の会社でも、ここでいちばん多く止まりました。
このとき、部下に話す気がないと考えるのは早すぎます。私が自分の1on1を見直したところ、原因は聞き方の側にありました。
確認したいのは3つです。
質問が広すぎないか。「何か困っていることはありますか」は、答える側からするとかなり難しい質問です。困りごとを自分で言語化し、話す価値があるかを判断し、言葉にする、という3つを同時に求めています。
月次会議で出た数字や、動きの止まっている案件など、具体的な入口から入ると答えやすくなります。
責められる場だと思われていないか。「なぜ進んでいないの」から入ると、相手は理由の説明ではなく弁明を準備します。聞きたいのは、できていないことではなく、どこで止まっているかです。
その人に合った振り方になっているか。同じ聞き方が全員に合うとは限りません。予定していない案件まで話す人もいれば、進んでいる案件があるのに「特にありません」と答える人もいます。同じ質問をしても、相手によって返ってくるものが変わります。
私の会社でも、あるリーダーとの1on1が、そのまま終わりそうになったことがあります。そこで「新規顧客への訪問状況はどうでしたか」と、テーマを具体的にして聞き直しました。
すると、電話をしてもテレアポの段階で断られてしまう、本当に話をしたい担当者へ取り次いでもらえない、という話が出てきました。訪問できていないのではなく、訪問する前の段階で詰まっていたのです。
ここまで聞けたことで、設定していたプロセスKPIそのものが、本人には動かせない指標だったことに気づきました。
会話が止まっているように見えるときほど、聞き方を変えると出てくる情報があります。
▷【関連記事:1on1で「特にありません」と言われたとき、上司が最初に見直したいこと】
段階4|導入したあと、やり方を確認し続ける
ここが最も抜けやすい段階です。
私が「なぜなぜ面談」に気づけたのは、たまたま管理職が話してくれたからでした。その一言がなければ、実施率だけを見て、うまくいっていると判断していたと思います。
1on1は一対一で行われるため、社長や上司からは中身が見えません。実施したかどうかは分かっても、何をどう話したかは分かりません。だからこそ、導入したあとに確認する機会を意図的に作る必要があります。
私の会社では、次のような形で確認しています。
- 1on1で出てきた内容のうち、組織として扱うべきものを月次会議に上げてもらう
- 上司自身が困っている点を、私との1on1で扱う
- 進め方に迷いが出ていないかを、定期的に聞く
口頭で伝え直すだけでは、また解釈が分かれます。そこで私は、1on1の進め方をテキストとトークスクリプトの形に残し、管理職に自習してもらったうえで集合研修を行いました。手元に残る形にしないと、伝えた内容は時間とともにずれていきます。
仕組みを変えるというのは、一度説明すれば終わるものではありません。私も、1on1のやり方を伝え直すまでに何度か指示を出す必要がありました。
1on1で出てきた話を、会議へ戻す
段階1で会議と1on1を分けたら、1on1で出てきた話を会議へ戻す道も作っておきます。ここがないと、上司と部下のあいだでは話が済んでいるのに、会社としては何も決まっていない状態になります。
私の会社では、次の手順で戻しています。
1on1で聞き取る → 組織で扱う内容か本人の詰まりかを分ける → 組織で扱うものを月次会議の議題に上げる → 会議で決めて、次の1on1で状況を確認する

分けるときの判断は、その問題を本人の努力で動かせるかどうかです。他部門の協力が要る、必要な情報が渡っていない、決めた行動そのものに無理があった、という場合は本人の側では動かせないので、会議へ戻します。
この道がないと、上司は聞くだけになります。聞いてもらったが何も変わらない、という経験が続くと、次の1on1で話が出てこなくなります。
組織で扱わない話は、その場の終わり方で次につなげます。何を決めて、次回どう確認するかはこちらにまとめています。

どこから手をつけるか
4つの段階を一度に整えようとすると、止まります。今の状態に合わせて、1つだけ選んでください。
1on1をまだ始めていない場合は、段階1からです。会議と1on1で何を扱うかを分けるところから始めます。ここを飛ばして面談だけ増やすと、会議の続きになります。
始めているが機能していない場合は、段階2を見直します。目的と上司の役割が共有されているか。共有したつもりで、実施の指示だけになっていないか。
面談が「特にありません」で止まっている場合は、段階3です。相手ではなく、質問の広さと入口を変えます。
一通り回っている場合は、段階4です。中身が見えていないまま、実施率だけを見ていないかを確認します。
このカテゴリで扱うこと
このブログの「1on1・育成」カテゴリでは、次のテーマを扱っています。
1on1の導入と設計:目的の共有、上司の役割、会議との役割分担など、始めるときに決めておくことを扱います。導入後にやり方がずれていく理由も含みます。
面談の進め方:質問の入口、相手による振り方の違い、上司が話しすぎていないかなど、実際の会話で起きることを扱います。
▷【関連記事:1on1で同じ質問を全員にしても、うまくいかない理由】
▷【関連記事:1on1で上司が話しすぎていないか|考えさせる場が指示の場に変わるとき】
教育と育成の仕組み:1on1の外側にある、社員教育の内製化や、仕事の任せ方を扱います。1on1だけで人は育たないため、教育の仕組みとセットで考えます。
読んだあとに残りやすい疑問
1on1はどのくらいの頻度で行うのがよいですか
私の会社では月に1回を基本にしています。頻度そのものよりも、月次会議のサイクルと合っていることを重視しています。会議で決めたことが動いているかを、次の会議までの間に一度整理できる間隔であれば、月1回で足ります。
頻度を増やすより先に、1回の中身が進捗確認で終わっていないかを見たほうが効果があります。
1on1で話す内容は、事前に決めておくべきですか
議題を細かく決める必要はありませんが、入口は決めておいたほうが答えやすくなります。月次会議で出た数字や、止まっている案件など、具体的な話題を1つ用意しておく形です。
「何か困っていることはありますか」だけで始めると、相手は何を話すべきか判断できず、「特にありません」になりやすくなります。
管理職が1on1をやりたがらない場合はどうすればよいですか
やりたがらない理由を先に確認します。時間が取れないのか、何を話せばいいか分からないのか、聞いても自分では動かせないと思っているのかで、対応が変わります。
私の場合は、目的と上司の役割を説明していなかったことが原因でした。やる気の問題として扱う前に、渡していない情報がないかを見たほうが早く進みます。
まとめ
1on1が機能しないのは、上司の面談スキルの問題ではありません。会議との役割分担、導入時に共有すること、聞き方、そして導入後の確認という4つの段階のうち、どこかが抜けていることが原因です。
私自身、実施を指示しただけで機能すると考えていた時期がありました。「社長のように、なぜなぜをやっています」と言われて初めて、渡していなかったものに気づきました。
一度に全部を整える必要はありません。今の状態に近い段階を1つ選んで、そこから始めてください。
1on1をどう進めるかを、順を追って整理したい方へ。
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「1on1を始めたが、何を話せばいいか分からない」
「どんな順番で進めればいいのか、決まっていない」
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