月次会議で、各部門から数字が報告される。
達成した、未達だった、というところまでは出てくる。
けれど、なぜそうなったのか、来月何を変えるのかは出てこない。結局その場で自分が聞くことになる。
こうした会議が続くと、社長は「会議の時間の多くを、自分が問いかけることに使っている」と感じるようになります。
この記事の結論は、その原因が管理職の意識や能力ではなく、会議の設計にあるということです。そして設計は、準備・進行・発言・記録・実行という5つの要素に分けて見直せます。この記事では、5つがそれぞれ何を指すのかと、どこから手をつけると効果が出やすいかを整理します。
会議が変わらないのは、進め方が下手だからではない
会議がうまくいかないとき、最初に疑われるのは進め方です。
ファシリテーションを学んだほうがいいのではないか。
もっと上手に質問すべきではないか。
自分が話しすぎているのではないか。
私自身もそう考えていました。ただ、進め方だけを変えても、会議はあまり変わりませんでした。
理由は単純です。会議の中でできることは、会議が始まる前に決まっている部分が大きいからです。
管理職が原因や打ち手を持ってこなければ、進行をどれだけ工夫しても、その場で考えてもらうしかありません。その場で考えるのは負荷が高く、時間もかかります。結果として、社長が問いかけて引き出す形になります。
つまり、会議で起きている問題の多くは、会議中の技術ではなく、会議の前後を含めた設計の問題です。
そして設計であれば、分解して1つずつ直せます。
月次会議を見直す5つの要素
私は、月次会議を次の5つに分けて見ています。

順番にも意味があります。1から5へ、会議の時間軸に沿って並んでいます。
1. 準備|何を考えてくればいいかを、始まる前に渡す
会議前に共有されているのが「何を報告するか」だけになっていないか、という観点です。
報告する項目だけを伝えると、管理職は数字を持ってくるところまでで準備を終えます。原因や打ち手は、会議の場で聞かれてから考えることになります。
必要なのは、この会議で何を議論し、何を決めるのかを先に渡しておくことです。
聞かれることが分かっていれば、考えてくることができます。ここが整っていない状態で進行だけを変えても、会議の中身は変わりません。
社長が会議で「なぜ」を繰り返してしまう構造については、こちらの記事で詳しく整理しています。
▷【関連記事:月次会議で社長が「なぜ」を繰り返してしまう原因と、最初の見直し方】
何を決めるのかを、アジェンダにどう書けばよいかは、こちらで整理しています。
▷【関連記事:会議のアジェンダに何を書くか|「報告事項」だけでは足りない】
2. 進行|社長がすべての質問役を担わない
社長が進行も、質問も、結論も担っている会議は、社長の発言量が自然と増えます。
このとき「社長が黙ればいい」と考えると、たいてい会議が止まります。黙るだけでは、誰も代わりに議論を整理しないからです。
必要なのは、黙ることではなく、役割を移すことです。
進行役が議題を進め、論点を整理し、次の行動まで決められる状態をつくる。そこまでできて初めて、社長は聞く側に回れます。
私は、この進行役を若手社員に任せることがあります。目的は会議を楽にすることだけではなく、管理職になってから必要になる力を先に経験してもらうためです。
▷【関連記事:社長が話しすぎる会議を変える。事前準備とファシリテーターで見直したこと】
▷【関連記事:若手社員に会議のファシリテーターを任せた理由】
3. 発言|一部の人だけが話す状態を変える
会議で発言する人が偏っていないか、という観点です。
声の大きい人だけが話している。
意見が対立すると、周りが黙ってしまう。
「何か意見はありますか」と聞いても、誰も答えない。
これを「発言しない社員の問題」として扱うと、対策は「もっと発言してください」と言うことになります。それで変わることは、あまりありません。
見直すのは場のほうです。意見と人を分ける、人の話を最後まで聞く、一部の人だけで進めない。こうしたルールを先に共有しておくと、発言のハードルが下がります。
▷【関連記事:会議で意見がぶつかるとき、最初に決めたいグランドルール】
4. 記録|「誰が・何を・いつまでに」を残す
会議で決まったことが、記憶と手帳の中にしか残っていない状態になっていないか、という観点です。
議事録があっても、発言をそのまま書き起こしただけでは、次の会議で使えません。使えるのは、決まったことと担当者と期限の3つが揃っている記録です。
そして、記録は残すこと自体が目的ではありません。次の会議の冒頭で、前回決めたことから始めるための材料です。
ここが抜けていると、毎月の会議が独立したイベントになります。先月何を決めたのかを誰も覚えていないまま、また新しい話を始めることになります。
5. 実行|決めたことが進まなかったときの扱いを分ける
会議で「誰が・何を・いつまでに」まで決めたのに、翌月になっても進んでいない。
このとき、同じ会議の場で理由を追及し続けると、かえって本当の原因が見えなくなることがあります。
未実行には2種類あります。組織として詰まっている問題と、その人が個人的に詰まっている問題です。
前者は会議で扱います。後者を全員の前で掘り下げても、本人は答えにくくなるだけです。
▷【関連記事:会議で決めたことが実行されないとき、会議と1on1をどう分けるか】
5つのうち、どこから手をつけるか
5つすべてを同時に変えることはできません。
私が最初に手をつけるとしたら、1の準備です。
理由は2つあります。
1つは、会議の中身に最も影響するからです。管理職が原因と打ち手を持ってくるようになれば、進行も発言も、その後で変えやすくなります。逆に準備が整っていない状態で進行だけ変えても、その場で考えてもらう時間が増えるだけです。
もう1つは、準備がいちばん低コストで変えられるからです。進行役を育てるのにも、発言しやすい場をつくるのにも時間がかかります。準備は、渡すものを1つ作れば変えられます。
ただし、準備がすでに整っている会社もあります。その場合は次を見ます。
原因と打ち手は出てくるのに、社長ばかりが話している → 2の進行を見ます。進行役が決まっていない、または決まっていても社長が先に質問してしまっている可能性があります。
特定の人しか発言していない → 3の発言を見ます。ルールを先に決めていないと、発言量は性格の差で決まってしまいます。
会議では決まるのに、翌月には進んでいない → 4の記録と5の実行を見ます。決まったことが残っていないのか、残っているのに個人の詰まりが放置されているのか、で打ち手が変わります。
そもそも会議の数が多く、出席する時間が長い → 5つに入る前に、会議体の分け方と参加者の決め方を見直せます。


私の会社では、フォームを作るところから始めた
以前の私の会社では、月次会議に共通のフォームがありませんでした。
部門ごとに資料の見せ方がばらばらで、グラフだけを持ってくる部門もあれば、原因は書いてあるのに打ち手がない部門もありました。質にばらつきがあるので、社長がその場で深掘りするしかない会議が続いていました。
当時は、意識の問題なのか、能力の問題なのかと考えていました。
しかし、後から分かったのは別のことでした。フォームがない状態では、管理職は毎回「どう見せれば社長に伝わるか」を自分で考えなければならなかったのです。求められているものが言語化されていないので、応えようがありませんでした。
そこで、報告資料を3つのブロックに分けたフォームを作りました。
– 成果KPIのトレンドを見せるブロック
– プロセスKPIのトレンドを見せるブロック
– 達成・未達についてのコメント、考察、今後の対応を書くブロック
作成にかかった時間は30分もかかっていません。私がラフなスケッチを書き、KPIマネジメントの社内講師を務めてくれた新任管理職が資料の形に整えてくれました。
説明も、会議の終わりに管理職全員を集めて30分未満です。どこに何を書いてほしいかを、作ってくれた本人が説明しました。
もちろん、一度で全員が書けるようになったわけではありません。同じ指摘を何度もした部署もあります。ただ、月を追うごとに部門間のばらつきは縮まっていきました。
変化として分かりやすかったのは、質問への反応です。
以前は「追加の対策は何か考えていますか」と聞くと、キョトンとする管理職がいました。フォームを導入したあとは、その問いを理解して返答できるようになってきました。予算未達の部門が原因と打ち手を自分で書いてくるようになり、達成した部門でも、その効果を維持するための標準化を考える管理職が出てきました。
会議の前に、文字にして準備してくる習慣が生まれたということです。
自社はどこで止まっているか、5つの質問で確かめる
次の月次会議を思い浮かべながら、5つの質問に答えてみてください。「はい」と言い切れないものが、いま見直す場所です。
1|準備
会議の前に、「何を報告するか」だけでなく「何を議論し、何を決めるか」が管理職に共有されていますか。
2|進行
社長が進行と質問と結論をすべて担わなくても、会議は次の行動まで決まりますか。
3|発言
声の大きい人だけでなく、必要な参加者から意見や提案が出ていますか。
4|記録
先月の会議で決まったことを、いま「誰が・何を・いつまでに」の形で言えますか。
5|実行
決めたことが進まなかったとき、それを会議で扱うのか、個別に扱うのかが決まっていますか。
答えの読み取り方
「はい」と言えないものが1つだけなら、そこを直せば会議は動き始めます。
複数ある場合は、番号の小さいほうから手をつけます。1が整っていないまま2や3を変えても、その場で考えてもらう時間が増えるだけだからです。準備が整うと、そのあとの4つは見直しやすくなります。
すべて「はい」と言えるのに会議が変わらないという場合は、問題が会議の外にある可能性があります。目標そのものが行動につながっていない、あるいは実行途中の詰まりが誰にも見えていない、という状態です。会議だけを直しても届きません。
最初の1枚は、1ブロックだけでいい
準備から手をつけると決めたとしても、いきなり完成度の高いフォームを作る必要はありません。
私の会社では3つのブロックに分けましたが、最初は3つ目の「達成・未達についてのコメント、考察、今後の対応」だけでも始められます。
成果KPIとプロセスKPIのグラフは、多くの会社ですでに何らかの形で出ているはずです。足りていないのは、その数字をどう読んだかと、次に何をするかの部分です。そこだけを書く欄を1つ足す。まずはそれで十分です。
欄があると、書かないまま会議に来ることが難しくなります。「考えてきてください」と言うよりも、空欄が1つある方が効きます。
そして、一度で全員が書けるようになるとは考えないことです。私の会社でも、同じ指摘を何度もした部署がありました。それでも月を追うごとに、部門間のばらつきは縮まっていきました。
会議は、始まる前に半分決まっている
月次会議が報告会で終わるのは、管理職の意識が低いからではありません。会議の前に、何を考えてくればいいかが渡されていないからです。
準備・進行・発言・記録・実行。この5つに分けて見れば、自社の会議がどこで止まっているかを特定できます。
そして、すべてを一度に変える必要はありません。私も、フォームを1枚作るところから始めました。
自社の会議がいまどの状態にあるかは、無料の社内OS診断アプリで確認できます。KPI・月次会議・1on1という3つの仕組みと、その結果としての自走度を、24の質問で見ていく形です。登録は不要で、4分ほどで終わります。
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