育成のために仕事を任せるとき、上司が確認したい3つのこと

育成のために仕事を任せるとき、上司が確認したい3つのこと

「この仕事を経験すれば、きっと成長する」

上司から見れば、そう思って仕事を任せることがあります。

少し難しい仕事をお願いする。

今の担当範囲より広い仕事を経験してもらう。

他部門との調整を任せる。

会議資料をまとめてもらう。

人に教える役割をお願いする。

どれも、社員の成長につながる可能性があります。ただ、任せる側がそう考えていても、本人に同じように見えているとは限りません。私自身、若い頃にその両方を経験しました。

目次

若い頃の私には「仕事が増えた」と見えていた

管理職になる前、私は複数の管理職が使う会議資料の作成を多く任されていました。品質や生産、コスト、予算など、さまざまな数字を集めて、会議で使える形にまとめる。

その仕事に時間を取られ、自分自身の業務目標が思うように進まないこともありました。残業が多くなる時期もありました。一方で、周囲には、自分の業務目標に集中して成果を上げている同僚もいました。

当時の私は、正直、「なぜ自分ばかり」と思うこともありました。上司へ愚痴をこぼしたこともあります。でも、今振り返ると、その仕事には別の意味もありました。会議資料を作るためには、自分の担当業務だけを見ていては足りません。

なぜこの数字を見るのか。管理職は、この数字から何を判断しようとしているのか。部門全体では、何が起きているのか。私は知らないうちに、当時の自分のポジションより少し高い視点から仕事を見る経験をしていました。

後になって、当時の上司も私の仕事ぶりを評価し、将来を考えながら経験を積ませてくれていたことを知りました。ただ、ここで私が今も考えることがあります。

上司の中に育成の意図があっても、本人に伝わっていなければ、その仕事は「ただ増えた仕事」に見えることがある。ということです。自分が仕事を任せる側になった今、私はここを意識するようになりました。

任せた側と任された側で見えているものの違い。上司には広い視野や将来の経験、本人には増えた仕事や増える残業が見えている

仕事を任せることと、育成することは同じではない

仕事を任せれば、自動的に人が育つわけではありません。もちろん、経験から学ぶことはたくさんあります。私自身、若い頃に任された仕事から、後になって大きな学びを得ました。でも、それだけに頼る必要はないと思っています。

上司側が、少しだけ育成の意図を言葉にする。任せた後の負荷を見る。必要なところで支援する。それだけでも、同じ仕事から得られるものは変わります。

私は、育成を目的として仕事を任せるのであれば、少なくとも次の3つを確認した方がいいと考えています。

1.この仕事で、何を経験してほしいのか

一つ目は、「この仕事を通じて、何を経験してほしいのか」を上司自身が明確にすることです。単に、

「この仕事が余っているから」

「誰かに任せたいから」

ではなく、育成として任せるのであれば、その仕事にどんな意味があるのかを考えます。たとえば、自分の担当だけでなく、部門全体を見る経験をしてほしい。複数の関係者と調整する経験をしてほしい。

数字を集めるだけではなく、数字から課題を考える経験をしてほしい。自分で理解するだけでなく、人へ教える経験をしてほしい。仕事そのものではなく、その仕事を通じて身につけてほしいものまで考える。

ここが曖昧だと、仕事を渡すこと自体が目的になってしまいます。逆に、身につけてほしいものが明確なら、どこまで本人に任せるのか、どこで支援するのかも考えやすくなります。

2.「なぜあなたに任せるのか」を伝えているか

二つ目は、育成の意図を本人に伝えることです。上司の中では、「期待しているから任せている」と思っているかもしれません。でも、本人から見えているのは、追加された仕事です。

だから私は今、新しい仕事を任せるときに、できるだけ、なぜその仕事をお願いするのかを伝えるようにしています。

また、年に一度の評価結果のフィードバック面談や、年に一度設けているフリートークの機会でも、個別に、今任せている仕事と、そこで期待している成長について話します。

もちろん、「この仕事をすれば、将来必ずこの役職にします」と約束するわけではありません。将来の組織や役割を、簡単に約束することはできません。でも、期待しているから、この経験をしてほしいということは伝えられます。

たとえば、

「今後もう少し広い範囲を見てほしいので、この仕事をお願いしています」

「この経験を通じて、他部門との調整もできるようになってほしいと思っています」

といった伝え方です。

仕事の指示としては、「これをお願いします」だけでも成立します。でも、「なぜあなたなのか」まで伝えることで、本人が仕事を見る意味は変わることがあります。

3.育成目的の仕事が、本来の仕事を圧迫していないか

三つ目は、特に重要だと思っています。育成のためだからといって、負荷をかけすぎていないか。という確認です。私自身、若い頃に会議資料の作成へ時間を取られ、自分自身の業務目標が停滞することがありました。残業も増えていました。

結果として、その経験が後から役立ったことは事実です。でも、だからといって、「成長につながったのだから、それでよかった」だけでは済ませたくありません。

育成のために良い経験を任せることと、本人の仕事量が適切であることは別です。新しい仕事をお願いした結果、本来の業務が大きく遅れていないか。残業が増えすぎていないか。複数の役割が集中していないか。

困っているのに、「期待しているから頑張ってほしい」だけになっていないか。ここは、任せる側が確認する必要があります。期待は、過剰な負荷を正当化する言葉ではありません。

私は、若い頃の自分の経験があるからこそ、この点も含めて育成だと思っています。

育成のために仕事を任せる前に確認する3つ。何を経験してほしいか、なぜその人に任せるのか、本来の仕事を圧迫していないか

少し高い視点が必要な仕事を任せる

私自身、上司から任された仕事を振り返ると、一つ共通していたことがあります。その時点の自分より、少し高い視点が必要な仕事だったことです。自分の担当業務だけを見ていればいい仕事ではなく、管理職が何を見ているのかを考える。

部門全体を見る。

他の部署とのつながりを見る。

会社の数字を見る。

そうした経験を、仕事を通じて積ませてもらっていました。

私は今、この考え方自体は非常に参考になると思っています。いきなり大きく難しい仕事を渡すのではなく、今より少し広い視野が必要になる仕事を任せる。これは、日常業務の中でできる育成です。

研修だけが、社員を育てる方法ではありません。仕事そのものを、育成の機会として使うこともできます。ただし、そこで忘れたくないのが、今回の3つです。

任せた後も、進捗だけを見ない

もう一つ、仕事を任せた後も大切だと思っています。確認するのが、

「終わりましたか」

「予定通り進んでいますか」

だけにならないことです。

育成目的で任せたのであれば、どこが難しかったのか。何を考えたのか。今までと違う視点で見えたことはあったか。どこで支援が必要か。そうしたことも確認する。

仕事を任せる。
↓
本人が経験する。
↓
振り返る。
↓
次の仕事へつなげる。

任せる、本人が経験する、振り返る、次の仕事へつなげるという育成の循環図

この繰り返しによって、単なる業務委任ではなく、育成につながっていきます。必要であれば、1on1のような個別の対話を使って、本人がどこで困っているのかを整理することもできます。

「期待している」は、上司の頭の中だけに置かない

若い頃の私は、自分に任されていた仕事の意味を、後になって理解しました。当時の上司が、私に今のポジションより広い視点を持たせようとしていたことも、自分が管理職になってから、より分かるようになりました。

その経験には、今でも感謝しています。一方で、自分が任せる側になった今は、一つ変えています。

期待していることを、上司の頭の中だけに置かない。

仕事を任せる。

その理由を伝える。

どんな成長を期待しているかを伝える。

そして、本人の負荷も見る。

私は、ここまで含めて、育成のために仕事を任せることだと考えています。

「この仕事は、成長につながるはずだから」と上司だけが考えるのではなく、本人にも、その仕事の意味が見える状態をつくる。仕事を任せる機会があれば、一度、この3つを確認してみてもいいと思います。


教える役割そのものを、育成に使う方法もある

仕事を任せる方法の一つとして、私は、社員に研修講師をお願いすることもあります。特に、「このテーマをもっと自分のものにしてほしい」と思う人に、あえて教える側を経験してもらうことがあります。

人へ教えるためには、自分の理解を整理し、自分の言葉で説明する必要があるからです。

▷【関連記事:一番学んでほしい人を、あえて研修講師にする理由】

また、仕事を任せた後、進捗確認だけではなく、本人がどこで困っているのかを整理する方法として、1on1を使うこともできます。

▷【関連記事:1on1導入で失敗した。管理職に伝えるべき3つのこと】

Kindle『対話形式で学ぶ!1on1ミーティングの基本 会議で決めたことを現場で動かす』では、1on1を単なる進捗確認で終わらせず、本人が考えながら仕事を進めるための対話として使う基本をまとめています。

仕事を任せたあと、どのように支援していけばいいか考えたい方は、参考にしてみてください。

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