社員教育を内製化するには|研修・教材・社内講師を仕組みにする考え方

棚に並んだ社内教材のバインダーと机の上のテキスト。記事タイトル『社内で研修はしている/教育は、私に依存している。』

社員教育を内製化する。以前の私は、「外部研修で学んでいたことを、自社で教えられるようにすること」くらいに考えていました。もちろん、それも内製化の一つです。

でも、実際に社内教育を続けていくと、それだけでは足りないことが分かってきました。自社で研修をしても、仕事で使われなければ意味がない。教材を作っても、読んでもらえなければ伝わらない。

社内講師を決めても、特定の人しか教えられなければ、その人に教育が依存します。そして、社長が毎回テーマを決め、教材を作り、教育を指示しているのであれば、外部研修への依存は減っても、教育そのものはまだ社長に依存しています。

私自身、一つずつ試しながら、社員教育の内製化について考え方が変わってきました。今は、単に、「社内で研修をすること」ではなく、「会社の中で学びが残り、仕事につながり、次の人へ広がっていく仕組みをつくること」

だと考えています。この記事では、私が社員教育を内製化する中で、特に重要だと感じているポイントを整理します。

目次

外部研修をやめることが目的ではない

最初にお伝えしておきたいのは、私は外部研修そのものを否定しているわけではありません。

現在でも、資格取得に必要な研修や、社員全員でロールプレイングを行う研修、グループ会社として受講が必要な研修など、外部で学ぶ意味があるものは利用しています。専門家から直接学んだ方がいいテーマもあります。

ですから、社員教育の内製化を、「外部研修をゼロにすること」と考える必要はないと思っています。むしろ大切なのは、何を外で学び、何を社内に残すのかを選べることです。

外部研修と社内教育の使い分けの比較図。外部は資格取得やロールプレイングに向き専門家から学べる。社内は一般的なビジネススキルに向き、自社の事例を入れ教材が会社に残る

私たちが内製化を進めてきたのは、主に一般的なビジネススキルの教育です。その中で、外部研修とは違う、社内教育ならではの利点も見えてきました。

1.研修で学んだことを、仕事につなげる

最初に見直したのは、研修そのものより、研修のあとでした。以前は、社員が研修から戻ってきて、「勉強になりました」と聞くと、どこか安心していました。

でも、そのあと仕事のやり方が変わっているかというと、必ずしもそうではありませんでした。今振り返ると、会社側が、

「何を学んできたのか」

「会社のどの業務で使うのか」

「その結果、何を変えるのか」

まで十分にフォローできていませんでした。研修を受けたことと、仕事が変わることの間には、もう一つ必要なものがあります。学びを実務へ接続することです。これは、外部研修でも社内研修でも同じです。

どれだけ良い内容を学んでも、実際の仕事で使う場面が決まっていなければ、知識のまま残る可能性があります。

▷【関連記事:研修をしても仕事が変わらない理由|学びを実務につなぐ3つの確認】

2.教材は「正しい」だけでは足りない

社員教育を内製化するようになってから、次に考えたのが、教材の作り方です。最初は、Web上にある情報を集め、必要な内容をまとめていました。その後、生成AIを使って、自社で使う教育用テキストを作るようになりました。

教材そのものは、以前より作りやすくなりました。ただ、ここでも一つ問題がありました。正しい内容を書けば、読んでもらえるわけではない。ということです。文章が長い。説明が続く。

初めて学ぶ人にとって、どこが重要なのか分かりにくい。そんな教材では、内容が正しくても、読み進める負担があります。そこで私は、通常の説明文だけではなく、対話形式のテキストも使うようになりました。

読む人が途中で感じそうな疑問を、質問役が先に聞く。それに対して、説明役が答える。この形にすることで、理解する順番まで教材の中で設計できると感じています。

教材を作るときは、「何を書くか」だけではなく、「どう受け取ってもらうか」まで考える必要があります。

▷【関連記事:社員教育の教材を対話形式に変えた理由|正しい内容だけでは伝わらない】

3.教える人自身も、育成の対象にする

社内研修というと、講師は、一番詳しい人に任せるものだと思っていました。もちろん、それがいい場合もあります。ただ私は、一番学んでほしい人に、あえて講師をお願いすることもあります。人に教えるためには、自分自身が内容を理解しなければなりません。

自分の経験と結びつける。

相手に説明できるように整理する。

質問されたら答える。

そうした過程そのものが、学びになります。私自身、以前読んだ心理学の本から、人に教えることには学習効果があるという考え方を知り、実際の社員教育で使ってきました。

その後、こうした考え方が、Learning by Teaching(教えることで学ぶ)と呼ばれていることを知りました。大切なのは、言葉そのものではありません。社内講師を、知識を渡す人だけとして考えないこと。

教える役割そのものを、育成の機会として使う。そうすると、受講する社員だけではなく、講師を担当する社員にも学びが残ります。

▷【関連記事:一番学んでほしい人を、あえて研修講師にする理由】

4.「社長が教材を作る」から、その先へ進む

社員教育を内製化し始めた頃は、私自身が生成AIを使ってテキストを作っていました。そのテキストを、社内の展開役へ渡す。展開役がスライドへ変換し、社員へ教育する。そこから始めました。

これでも、私一人が全員へ教える状態からは前進しています。ただ、教育テーマを決め、教材の元になるテキストを作っているのは、まだ私でした。

そこで、テキストからスライドへ変換できるのであれば、教材作成そのものも任せられるのではないかと考えました。私が使っていたプロンプトを渡し、テキストを作るところから任せるようにしました。現在は、さらに進んでいます。

教育テーマを選ぶところから、社員側で考える。

そのテーマについて教材を作る。

研修資料を作る。

社員へ展開する。

そこまで社内で進めるようになりました。

私自身が教材を作ることもあります。特に、私が本などから学んだことや、これまでの経験から、「今の社員には、この知識が必要だ」と感じるテーマは、私が作ることがあります。

一方、すでに社内で一度教育したことがある内容や、展開役自身が外部研修などで学んだことのあるテーマについては、社員側で教材を作っています。つまり、社長が全部作るか、社員に全部任せるかではありません。

知識や経験に応じて、少しずつ教育を作る役割を会社の中へ広げています。

内製化を支える4つの要素のパズル図。実務へつなぐ、教材を残す、教える人も育てる、作る役割を広げる

▷【関連記事:社員教育を内製化した次に考えたこと|社員が教育を回す仕組み】

社員教育の内製化にも段階がある

振り返ると、私たちの社員教育は、一度に現在の形になったわけではありません。大きく見ると、次のように変わってきました。

外部研修で学ぶ
↓
社内で使う教材を作る
↓
社内の人が講師をする
↓
教材を作る方法も社内へ渡す
↓
社員自身が教育テーマを考え、教材を作り、展開する

私は、この変化を見て、社員教育の内製化にも段階があると感じています。

社員教育の内製化が進む5段階の階段図。外部で学ぶ、社長が教材を作る、社員がスライドにして教える、作り方も社員へ渡す、社員がテーマから決める

最初から、「社員だけで全部回してください」とする必要はありません。

まず、社内で教材を作れるようにする。

次に、教えられる人を増やす。

さらに、教材を作る方法を共有する。

そして、必要な教育そのものを考えられる人を増やす。

少しずつ役割を移していく。

その方が、実際には進めやすいと思います。

AIは、教育を内製化するための道具

私たちの社員教育では、生成AIをかなり使っています。

テキストを作る。

スライドの構成を考える。

説明用のナレーションを作る。

理解度を確認するテストを作る。

こうした作業に、AIを使えるようになりました。

これによって、社員教育を内製化するハードルは、以前より下がったと感じています。ただし、AIを使えば、社員教育が自動的にうまくいくわけではありません。

何を学んでほしいのか。

どの業務で使うのか。

誰に教えてもらうのか。

どんな形なら理解しやすいのか。

学んだあと、どう確認するのか。

こうした部分は、会社側で考える必要があります。AIは教材を作ることを助けてくれる。
でも、教育の目的まで決めてくれるわけではない。
私は、この順番を間違えないようにしています。

内製化の目的を「コスト削減」だけにしない

社員教育を内製化すると、外部研修へ依頼する回数を減らせることもあります。教材も、一度作れば繰り返し使うことができます。そのため、結果として費用面の効果が出ることもあります。

ただ、私は、コスト削減だけを目的にすると、少しもったいないと思っています。内製化の大きな価値は、自社の中に知識が残ることです。

自分たちの事例を入れられる。

自分たちの仕事に合わせられる。

必要になったときに、もう一度教育できる。

教える人自身も学ぶ。

さらに、次の人へ教えることができる。

そうやって、一人が学んだ知識を、会社の知識へ変えていく。

私は、こちらの方が、社員教育を内製化する大きな意味だと思っています。

「研修をする会社」から「学びが回る会社」へ

社員教育を内製化するというと、最初は、「研修資料を自分たちで作る」、「社内講師が研修する」という形をイメージすると思います。私もそうでした。でも、実際に続けていくと、その先があります。

研修で学んだことを、仕事で使う。

教材を改善する。

教える側にも回る。

教材を作る方法を、他の人へ渡す。

必要な教育を、社員自身が考える。

こうして、教育が一回限りのイベントではなく、会社の中で回るようになる。

私は、そこまで進んで初めて、社員教育が会社の仕組みの一つになっていくのだと思っています。社員教育を内製化したいと考えているのであれば、最初からすべてを社内で作ろうとする必要はありません。

今行っている教育について、学んだことが仕事につながっているかを確認する。そこから始めれば十分だと思います。

学びが社内で回る状態は、自走の条件の一つです。ほかの条件との関係は、こちらで整理しています。

▷【関連記事:社長がいないと止まる会社を変える|自走のための4つの条件】


生成AIを使って社員教育を内製化したい方へ

私は、外部研修を利用するところから始まり、生成AIを活用しながら、自社で社員教育用の教材を作る形へ変えてきました。

Kindle『外部研修いらずの社員教育 ChatGPTで部下が勝手に育つ組織づくり』では、生成AIを使って、社員教育用の教材を作るための基本的な流れをまとめています。

この記事で紹介したような、社内講師の育成や、教育テーマそのものを社員が考える現在の形は、その後も社員教育を改善していく中で進んできたものです。

まず、生成AIを活用して、自社で社員教育用の教材を作るところから始めたい方は、参考にしてみてください。

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棚に並んだ社内教材のバインダーと机の上のテキスト。記事タイトル『社内で研修はしている/教育は、私に依存している。』

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