1on1で「特にありません」と言われたとき、上司が最初に見直したいこと

薄暗い会議室の机に開いたノートが置かれた写真。「『特にありません』から、会話を始める。」「1on1で見直したい3つのこと」の文字

「特にありません」

1on1をしていると、よく返ってくる言葉です。こちらとしては、「何か困っていることはないか」「進んでいないことはないか」と思って聞いている。

でも、「特にありません」と言われると、そこで会話が止まってしまいます。本当に何も問題がないのであれば、それでいいと思います。ただ、私自身の経験では、「特にありません」と言われたからといって、本当に何もないとは限りません。

質問の仕方を少し変えると、その人が困っていることが出てくる場合があります。実際、私があるリーダーと1on1をしていたときにも、そういうことがありました。

目次

「特にありません」で終わりそうになった1on1

その頃、新規顧客への訪問は予定どおりには進んでいませんでした。私は月次会議の資料を手元に持っていたので、そのことは把握していました。

ただ、1on1だからといって、本人が最初から、「私はここに困っています」と話してくれるわけではありません。そこで私は、「新規顧客への訪問状況はどうですか?」と、テーマを具体的にして聞きました。

すると、少しずつ状況が出てきました。新規顧客へ電話をしても、テレアポの段階で断られてしまう。本当に話をしたい担当者へ取り次いでもらえない。

つまり、「新規顧客への訪問ができていない」という数字だけでは見えなかった、訪問する前の段階で詰まっているということが分かってきました。そこで私は、「訪問させてもらえないのは、何が障害ですか?」と聞きました。

話を具体化していくことで、本人がどこで困っているのかが少しずつ見えるようになったのです。この経験から私は、1on1では、質問を具体的にすることで初めて話が出てくることがあると感じています。

「何か困っていることはありますか?」は意外と難しい

上司からすると、「何か困っていることはありますか?」は、とても自然な質問です。でも、部下からすると、意外と答えるのが難しいことがあります。なぜなら、「困っていること」という範囲が広いからです。

仕事全体のことなのか。

今月の目標のことなのか。

顧客対応のことなのか。

優先順位のことなのか。

他部署との関係なのか。

本人自身も、何に困っているのかをまだ整理できていない場合があります。そんな状態で、「何かありますか?」と聞かれても、すぐには言葉が出てきません。その結果、「特にありません」という返事になることがあります。

だから私は、相手から話が出ないとき、質問を、もう少し具体的なテーマへ落とすようにしています。今回であれば、「仕事で何か困っていますか?」ではなく、「新規顧客への訪問状況はどうですか?」としました。

テーマが具体的になると、本人も実際に起きていることを思い出しやすくなります。

質問の範囲を絞る同心円の図。仕事全体や今月の目標では答えにくく、新規顧客への訪問まで絞ると話が出てくる

月次会議の情報が、1on1の入口になることもある

今回、私が新規顧客への訪問について具体的に聞けたのは、月次会議の資料を手元に持っていたからです。成果KPIやプロセスKPIの進捗を確認していれば、「どこが予定どおり進んでいないのか」はある程度分かります。

ただし、その数字を使って、月次会議の中で個人を深く追及するわけではありません。

会議では、組織として何が起きているのか。

次に何をするのか。

を考える。

一方で、特定の人が実行途中で困っていそうなら、1on1で話を聞く。

私は、そのように役割を分けています。つまり、月次会議で見えている数字は、1on1で本人を追及するための材料ではなく、「どこから話を始めるか」を考える材料として使うことができます。

月次会議の数字を1on1の入口に使う流れ図。予定どおり進んでいない場所を見つけ、その話から始めると本人の詰まりが見える

会議と1on1の役割については、こちらの記事でも整理しています。

▷【会議で決めたことが実行されないとき、会議と1on1をどう分けるか】

「なぜ進んでいないの?」から入ると、話しにくくなることがある

同じ新規顧客訪問の話でも、聞き方によって受け取り方は変わります。たとえば最初から、「なぜ新規顧客への訪問が進んでいないの?」と聞いたら、本人はどう感じるでしょうか。上司としては、単純に原因を知りたいだけかもしれません。

でも相手からすると、「できていない理由を説明しなければいけない」と感じる可能性があります。すると、本当に困っていることを整理するより先に、自分を守るための答えを探してしまいます。

私自身、1on1は、なぜ進んでいないのかを責める場ではないと理解してもらうことが大切だと感じています。今回の1on1でも、新規顧客への訪問が少ないこと自体を責めたかったわけではありません。

知りたかったのは、どこで止まっているのかです。話を聞いてみると、本人が訪問しようとしていないのではなく、その前段階で相手企業へつながることに苦戦していました。数字だけでは、そこまでは分かりません。

1on1で確認したいのは「できていないこと」より「どこで止まっているか」

1on1で、「目標に対して進んでいるか」を見ること自体は必要だと思います。ただ、進んでいないことが分かったところで終わると、単なる進捗確認になります。私は今、その先を見るようにしています。

何が止めているのか。

どこから進めなくなったのか。

本人だけで解決できることなのか。

上司の支援が必要なのか。

そこを整理する。

今回の例なら、「新規顧客への訪問が少ない」という事実から話を具体化したことで、「テレアポの段階で断られている」、「話をしたい担当者へ取り次いでもらえない」というところまで見えてきました。

ここまで分かれば、少なくとも、「本人がやっていない」という単純な話ではないことが分かります。1on1で確認したいのは、できていない事実そのものより、どこで動けなくなっているのか。私は、そこが重要だと考えています。

話を聞いたことで、プロセスKPIそのものの問題にも気づいた

この新規顧客訪問の事例では、もう一つ分かったことがありました。新規顧客への訪問件数は、営業本人が努力すれば自由に増やせる数字ではありませんでした。

電話をしたときに、会いたい担当者へ取り次いでもらえるか。相手企業が訪問を受け入れてくれるか。自分たちだけではコントロールできない要素が多かったのです。

つまり、本人が動けない理由を1on1で具体的に聞いたことで、プロセスKPIそのものにも問題があることが見えてきたということです。ここでも、「なぜできていないのか」と本人を責めるだけでは、この問題には気づけなかったと思います。

プロセスKPIを設定するときの、「自分で動かせる行動か」「成果につながる行動か」という考え方については、こちらの記事で詳しく整理しています。

▷【動けないKPI、効かないKPI|プロセスKPIが満たすべき2つの条件】

同じ聞き方が、全員に合うとは限らない

1on1をやっていて、もう一つ感じることがあります。それは、相手によって、話の振り方を変える必要があるということです。1on1は一対一です。当然、相手の性格も違います。少し聞けば、自分からどんどん話す人もいます。

一方で、テーマを具体的にしないと話しにくい人もいます。すぐに考えを言葉にできる人もいれば、少し時間をかけないと整理できない人もいます。だから、「この質問をすれば全員が話す」というほど単純ではありません。

私自身、同じ質問だけでは十分ではないと感じています。大切なのは、決まった質問を順番に聞くことより、目の前の相手が話しやすい形に、話題の入り方を調整することなのだと思います。

「特にありません」と言われたときに確認したい3つのこと

1on1で相手から、「特にありません」と言われたとき、私はすぐに、「本当に何もない」とは決めないようにしています。まず、次の3つを確認します。

「特にありません」の背後にある3つ。質問が広すぎる、責められる場だと感じている、話し方が合っていない

1. 質問が広すぎないか

「最近どうですか?」

「困っていることはありますか?」

だけでは、何を話せばいいのか分からないことがあります。月次会議の数字や、最近取り組んでいる仕事など、具体的なテーマから話を始めた方が、本人も状況を思い出しやすくなります。

2. 相手が「責められる場」だと思っていないか

進んでいないテーマについて聞くとき、相手が、「できていない理由を説明させられる」と思ってしまうと、本音は出にくくなります。

1on1は、できなかった理由を追及するためではなく、どこで困っているのかを一緒に整理する場だと理解してもらう必要があります。

3. その人に合った話の振り方になっているか

人によって、話しやすい入り口は違います。抽象的に聞いても話せる人もいれば、具体的な仕事から入った方が話しやすい人もいます。すぐに答えが出る人もいれば、少し考える時間が必要な人もいます。

「1on1だからこの質問」

と固定するより、相手に応じて変えていく必要があると感じています。

「特にありません」は、会話の終わりとは限らない

1on1で、「特にありません」と言われると、上司としては少し焦ります。せっかく時間を取ったのに、何を話せばいいのか分からない。そんなこともあります。

でも、「特にありません」は、必ずしも、「本当に何もない」という意味ではありません。まだ話題が具体的になっていない。本人自身も、困っていることを整理できていない。あるいは、話しても大丈夫な場だと感じられていない。

そういう可能性もあります。今回の1on1でも、新規顧客訪問という具体的なテーマへ話を移したことで、初めて、テレアポの段階で止まっていることが分かりました。だから私は、こう考えています。

「特にありません」は、部下に話すことがないのではなく、上司がまだ話せる入口を見つけられていないだけかもしれません。

1on1で大切なのは、たくさん質問することではありません。本人が話せるところまで、一緒にたどっていくこと。

そして、「特にありません」と言われたときこそ、相手に問題がないと判断する前に、こちらの質問の仕方や、1on1の場の作り方を見直してみる。そこから、見えてくることがあります。

具体的に聞き直しても、話が続かないことがあります。そのとき、沈黙を埋めようとして、こちらが話しすぎてしまう。その先で起きたことは、こちらで書いています。

▷【関連記事:1on1で上司が話しすぎていないか|考えさせる場が指示の場に変わるとき】

1on1を管理職へ導入したときの失敗については、こちらの記事でも書いています。

▷【1on1を「やってください」だけで始めると失敗する。管理職への導入で見落としていたこと】

聞き方の見直しは、1on1を仕組みにする4つの段階のうちの1つです。ほかに何を整えるとよいかは、こちらで整理しています。

▷【関連記事:1on1を導入したのに機能しないとき、どこから見直すか|4つの段階】

1on1の基本を体系的に整理したい方へ

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「1on1で何を話せばいいか分からない」

「部下から話が出てこない」

「進捗確認だけの時間になってしまう」

という方は、こちらも参考にしてみてください。

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薄暗い会議室の机に開いたノートが置かれた写真。「『特にありません』から、会話を始める。」「1on1で見直したい3つのこと」の文字

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