社長になる前の私は、会議では、自分の報告のとき以外ほとんど話さない人でした。ところが、社長という立場になってからは意識して話すようになりました。
会社としてどこへ進むのか。
数字をどう見るのか。
何が問題なのか。
次に何をするのか。
社長なのだから、自分がきちんと伝えなければいけない。
そんな気持ちが強かったのだと思います。
その結果、いつの間にか私は、会議で一番よく話す人になっていました。
管理職から十分に意見が出てこないと、「考えていないのではないか」と感じる。
すると私が質問する。
答えが浅ければ、さらに聞く。
「それはなぜ?」
「どうするの?」
「誰がやるの?」
そうしているうちに、また私の発言時間が長くなります。ただ、ある頃から、もう一つのことも感じるようになりました。管理職が話さないのではなく、私が話す機会を奪っているのではないか。ということです。
そして、さらに振り返ってみると、私が話しすぎていた原因は、私自身の性格や気負いだけでもありませんでした。私が聞かなければ、必要な情報が出てこない会議になっていたのです。
部門によっては「結果のグラフ」しかなかった
当時の私の会社には、月次会議で使う共通の報告フォームがありませんでした。何を報告するかは、かなり各部門に任せていました。そのため、部門によって資料の内容が違います。中には、結果を示すグラフだけという部門もありました。
結果の数字は分かります。
でも、なぜその数字になったのか。
その数字につながる行動はどうだったのか。
何が問題だったのか。
次にどうするのか。
そこまでは分かりません。当然、私は会議の場で聞くことになります。
「なぜこうなったの?」
「どんな活動をしていたの?」
「今後どうするの?」
一つ答えが返ってきたら、さらにその内容を確認する。
結果として、私が根掘り葉掘り聞く会議になっていました。

今振り返ると、私が話しすぎていたというより、私が聞かなければ必要な情報が出てこない会議構造だったとも言えます。この状態のまま、「社長はもっと黙った方がいい」と言われても、なかなか難しかったと思います。
必要な情報が出ていない以上、社長として確認しなければならないからです。
社長が話しすぎるのを「話し方」の問題だけにしない
会議で社長が話しすぎる。この状態だけを見ると、「社長がもっと黙ればいい」と思うかもしれません。私自身も、話しすぎていると気づいてからは、発言を減らそうと考えました。でも、ただ黙ろうとするだけではうまくいきませんでした。
成果KPIが未達なのに、その背景が分からない。プロセスKPIがどう動いたのかも見えない。次に何をするのかも決まっていない。そんな状態で、「私は話しすぎるから黙っていよう」とはできません。結局、
「これはどうなっているの?」
「なぜ?」
「次はどうする?」
と聞くことになります。
だから私は、社長の発言量を減らすなら、社長が聞かなくても必要な情報が出てくる状態を先につくる必要があると考えるようになりました。そこで見直したのが、会議前の準備と、ファシリテーターの役割でした。
会議前に「考える材料」を共有する
まず、会議の前を見直しました。私の会社では、議題を事前に共有するようにしています。さらに、各部門に以下を事前に確認できるようにしています。
- 部門KGI
- 成果KPI
- プロセスKPI
- 活動状況のサマリー
ここで大切なのは、会議当日に初めて数字を見る状態にしないことです。もし会議の場で初めて、「成果KPIが未達です」と分かったら、そこから原因を考えなければいけません。
社長は待てなくなり、「なぜ未達だったの?」と聞く。管理職はその場で考える。答えが十分でなければ、さらに社長が聞く。こうして、社長が質問し続ける会議ができあがります。
一方で、議題や成果KPI・プロセスKPIなどを事前に確認できれば、管理職側も、「何を話す必要があるのか」を考える時間を持てます。会議で考えてもらうのではなく、会議までに考えられる状態をつくる。
これだけでも、社長がその場で一つずつ聞き出す必要は減っていきます。報告内容をどのように揃え、会議前に原因や対応まで考えてもらうようにしたかについては、こちらの記事で詳しく書いています。

前回の会議で決めたことから始める
月次会議の冒頭では、前回の会議で指摘・確認した事項も振り返ります。前回、何をすることになっていたのか。その後どうなったのか。ここから始めることで、会議が毎月リセットされにくくなります。
月次会議は、今月の数字だけを見る場ではありません。
前回決めたことを実行する。
その結果を確認する。
原因を考える。
次に何をするかを決める。
その流れをつなげていく場でもあります。前回の話が残っていなければ、毎月また、「先月の件はどうなったの?」と社長が聞くことになります。
だから、社長の質問を減らすためには、質問を我慢するより、確認すべきことが最初から見えるようにしておく方が効果的だと感じています。
私が全部聞くのではなく、ファシリテーターが聞く
もう一つ大きかったのが、ファシリテーターの存在です。以前の私は、報告を聞きながら気になるところがあれば、自分で聞いていました。
成果KPIはどうなのか。
プロセスKPIはどうなのか。
なぜそうなったのか。
次はどうするのか。
私が気づき、私が質問し、私がさらに深掘りする。
これでは、私の発言時間が長くなるのは当然です。ファシリテーションを取り入れてからは、必要な確認をファシリテーターが行うようになりました。すると私は、会議を進めるための質問を、すべて自分でしなくてもよくなりました。
これは私にとって大きな変化でした。社長が発言を減らそうとしても、質問役まで社長が担っていたら、なかなか減りません。ファシリテーターが議論を進め、必要な問いを投げてくれる。
すると私は、社長として判断が必要な場面を中心に発言できるようになります。
「社長が黙る」のではなく、役割を移す
ここは、実際に会議を変えていく中で重要だと感じたところです。社長が話しすぎる会議を変えるとき、単純に、「社長は黙りましょう」ではうまくいきません。誰も聞かなければ、必要な議論まで止まってしまいます。
必要なのは、社長がそれまで担っていた役割の一部を、仕組みや他の役割へ移すことです。たとえば、事前に必要な資料を準備することで、「情報を一から聞き出す役割」を減らす。
ファシリテーターが質問することで、「議論を進めるために問いかける役割」を移す。すると社長には、「必要なところで判断する役割」が残ります。

私の場合、この役割分担ができてきたことで、以前のように管理職へ根掘り葉掘り聞く場面が減りました。
管理職が話すためには、社長が黙るだけでは足りない
以前の私は、管理職から発言が出てこないと、「もっと考えてほしい」と思っていました。今でも、自分で考えて意見を出してほしいとは思っています。ただ、その前に、考えて話せる会議になっているかを見るようになりました。
会議前に議題が分からない。
成果KPI・プロセスKPIを見るのも当日が初めて。
資料には結果しかない。
社長が次々と質問する。
考えている途中で、さらに次の質問が来る。
これでは、管理職が十分に考えて話すのは難しくなります。
一方で、議題や数字を事前に確認できる。
前回の指摘事項も整理されている。
ファシリテーターが議論を進める。
社長がすぐに質問を重ねない。
そうすると、管理職が考え、話す余地が生まれます。私の会社でも、急に全員が活発に発言するようになったわけではありません。ただ、管理職からの発言は少しずつ増えてきています。
そして私自身が一番感じている変化は、私が根掘り葉掘り聞く必要が減ったことです。
会議の最後に「やること」を残す
会議では、議論して終わりにしないことも大切です。会議終了時にはその日の議論を振り返り、以下を共有します。
- 何をするのか
- 誰が担当するのか
- いつまでに行うのか
会議中に良い議論ができても、ここが曖昧だと、翌日からの行動につながりません。そして次の月次会議で、「前回、何をすることになっていたの?」と社長がまた確認することになります。
だから私は、会議の前だけでなく、会議の終わり方も、社長がどれだけ話す必要があるかに影響すると考えています。
事前に考える。
会議で議論する。
次にやることを明確にする。
実行する。
次の会議で振り返る。
この流れがつながっていれば、社長が毎回一から聞き出す必要は少なくなります。
社長の発言量は、会議が始まる前から決まっている
以前の私は、「会議で自分が話しすぎないようにしよう」と考えていました。でも今は、少し違う見方をしています。会議中の発言量は、会議が始まってからだけで決まるものではありません。
会議前に何を共有したのか。
管理職が考える材料を持っているのか。
報告内容が部門任せになっていないか。
誰が議論を進めるのか。
前回の事項をどう確認するのか。
最後に次の行動をどう残すのか。
こうした会議の前後の設計によって、社長がどれだけ話さなければならないかは変わります。
私が見直した3つのポイント
もし、「会議で自分ばかり話している」と感じている社長がいたら、私はまず次の3つを確認することをおすすめします。

1. 会議前に、管理職が考えられる材料を渡しているか
議題だけでなく、部門KGI・成果KPI・プロセスKPI・活動状況など、議論に必要な情報を事前に確認できる状態にします。会議で初めて考えてもらう状態を減らします。
2. 社長がすべての質問役を担っていないか
社長が、進行、質問、深掘り、判断、すべてを担当すると、どうしても発言量は増えます。ファシリテーターが議論を進め、必要な問いを投げることで、社長は必要な判断に集中しやすくなります。
3. 会議の最後に、次の行動が残っているか
何をするのか。
誰が担当するのか。
いつまでに行うのか。
ここを明確にしておけば、次回の月次会議で、社長がまた一から状況を聞き出す必要を減らせます。
私は「話さない人」から「話しすぎる社長」になった
社長になる前、私は会議でほとんど話さない側でした。それが、社長という立場になり、「自分が伝えなければ」と考えるうちに、今度は話しすぎる側になりました。
だから、会議で発言しない人の感覚も、社長として話したくなる感覚も、どちらも少し分かる気がします。管理職から発言が出ないとき、「考えていない」と感じることもありました。でも、自分が話す機会を奪っているのではないか。
そして、そもそも私が聞かなければ情報が出てこない会議になっているのではないか。そう考えるようになったことで、会議の見方が変わりました。自分の話し方を変えるだけではなく、自分が話し続けなくても進む仕組みをつくる。
その方向へ考えるようになりました。
社長が話しすぎるなら、「黙る」より先に会議の構造を見る
社長が話しすぎる会議を変えるために、私が必要だと感じているのは、社長本人の我慢ではありません。会議前に、考える材料をそろえる。報告内容を、必要な情報が出る形に整える。会議中は、ファシリテーターが議論を進める。
会議の最後に、やること・担当・期限を共有する。こうして、社長が一から聞き出さなくても進められる状態をつくることです。私自身、まだ会議を改善している途中です。管理職の発言も、一気に増えたわけではありません。
それでも、以前のように私が根掘り葉掘り聞き続ける場面は減ってきました。だから私は、社長が話す量を減らしたいなら、まず社長が話さなくても進む会議をつくる。この順番が大切だと考えています。
会議の準備・進行・発言・記録・実行という5つの要素から、どこを見直すとよいかを整理した記事もあります。
▷【関連記事:月次会議が報告会で終わる会社が、最初に見直す5つのこと】
月次会議の基本を体系的に整理したい方へ
Kindle『対話形式で学ぶ!月次会議ファシリテーションの基本』では、月次会議の役割、ファシリテーターの考え方、会議前の準備から会議終了時の確認まで、基本的な流れを対話形式で整理しています。
「社長ばかり話す会議を変えたい」
「数字の報告だけでなく、管理職が考えて話す会議にしたい」
という方は、こちらも参考にしてみてください。
\ Kindle+なら無料で読めます /
本書の読者向けに、月次会議のアジェンダや進行台本をその場で作れるWebアプリを用意しています。
