プロセスKPIまで作った。会議でも数字は報告される。
それでも、社員の動きは変わらない。あるいは、動いてはいるのに成果につながらない。
この2つは、別の問題です。前者はプロセスKPIが「自分で動かせる行動」になっていないときに、後者は「成果につながる行動」になっていないときに起こります。
この記事では、プロセスKPIが機能するために満たすべき2つの条件と、それぞれの見直し方を整理します。
プロセスKPIが機能するには、2つの条件がいる
KGI・CSF・成果KPI・プロセスKPIという4つの言葉を整理しても、それだけでKPIが動き出すわけではありません。4つの役割の違いについては、「KPIが『成果指標』しかない会社が最初に整理すべき4つの言葉」で整理しています。
プロセスKPIが実際の行動に変わるには、次の2つが揃っている必要があります。
条件1:自分(自社)でコントロールできる行動か
条件2:成果につながる行動か

条件1が欠けると、社員は動きたくても動けません。条件2が欠けると、動いても成果につながりません。
どちらか一方だけでは足りない、という話です。
条件1|自分でコントロールできる行動になっているか
プロセスKPIは、自分(自社)の行動だけで動かせる指標である必要があります。
相手の都合や外部要因に左右される数字を置いてしまうと、未達が続いても「相手次第なので仕方ない」で説明が終わります。それでは、次に何を変えるかを考える材料になりません。
自社で起きたこと
私の会社では、新規のお客様とのアポイントを、社外の取引先に取ってもらう形になっていました。
予算では「新規の見込み顧客訪問件数」をプロセスKPIに設定していました。
ところが、その取引先はどちらかというと待ちの営業スタイルで、見込み顧客から連絡が入ったら会いに行くというスタンスでした。
私が「なぜ新規の見込み顧客訪問ができないのか」と問うと、営業からは「取引先に伝えます」という回答が返ってきます。
未達が続いているのに、次の予算期になっても、同じ指標をそのまま使い続けていました。
訪問できること自体が、実は自社の行動だけでは完結しない指標だったのです。言い換えれば、これはプロセスKPIというより、成果に近い指標でした。
見直し方は2つある
コントロールできない指標だと分かったとき、打ち手は2つあります。
(a) 自分でコントロールできる項目に見直す
同じ目的を、自社の行動だけで動かせる指標に置き換えます。先ほどの例であれば、取引先にアポイント取得を依頼する見込み顧客リストを何件増やすか、取引先へどれくらいフォローアップするか、といった行動です。
(b) その業務自体を、自分でコントロールする形に変える
指標ではなく、業務の持ち方そのものを変える方法です。外部に依存していた仕事を自分たちが行う形に変えることで、コントロールできる領域にするということです。誰がその業務を担うのかまで踏み込む選択肢を、持っておく必要があります。
条件2|成果につながる行動になっているか
自分でコントロールできる行動であっても、それが成果につながらなければ意味がありません。
ここで見るべきは、量ではなく「どこで落ちているか」です。
新規開拓であれば、コンタクトを取り、訪問し、商談に進み、受注に至る、という段階があります。それぞれの段階には、次に進める割合があります。
コンタクトは取れているのに訪問につながらないのか。訪問はできているのに商談に進まないのか。落ちている場所によって、打つべき手はまったく違います。
この「次の段階へ進む割合」を見ないまま行動量だけを追うと、動いてはいるのに成果が変わらない状態になります。
転換率を成果KPIにし、それを上げる行動をプロセスKPIにする
考え方を、営業の例で具体的に見ていきます。
部門KGIを「新規顧客の売上高」とします。
段階1:コンタクトを取る
– 成果KPI:新規顧客訪問件数
– プロセスKPI:電話・メールによるコンタクト回数
ここまでは、よく設定される形だと思います。ただし、この段階だけで止まると、コンタクトの量だけを追うことになります。
段階2:コンタクトから訪問につなげる
– 成果KPI:コンタクトした際に、実際に訪問させてもらえる確率
– プロセスKPI
– 電話でのトークスクリプトを作成し、社内でレビューする回数
– トークの練習回数
– メール文面のレビュー回数
段階3:訪問から商談につなげる
– 成果KPI:訪問した際に、その先の商談に進んだ確率
– プロセスKPI
– 訪問時に使うプレゼン資料のレビュー回数
– プレゼンの練習回数

この置き方の何が違うのか
こうして設計すると、プロセスKPIは「量をこなすための数字」ではなく、「次の段階へ進む確率を上げるための準備」になります。
そして、ここに並んだ準備行動は、どれも自社の中だけで完結します。条件1も同時に満たしている、ということです。
成果につながる行動を探していくと、多くの場合、準備・レビュー・練習といった、自分たちで動かせる領域に行き着きます。
効かないと分かったら、変えていい
KPIは、期初に決めたら守り抜く約束ではありません。仮説です。
プロセスKPIは達成しているのに成果KPIが動かないなら、その行動は成果につながっていない可能性があります。プロセスKPIが未達続きなら、そもそも自社でコントロールできない指標かもしれません。
どちらの場合も、期の途中で見直してかまいません。
未達そのものよりも、効かないと分かった行動を続けることの方が問題です。私の会社でも、期の途中でプロセスKPIを変更したいと自分から言ってくる社員が出てくるまでには、時間がかかりました。
動ける行動か、効く行動か
プロセスKPIを見直すときの問いは、2つです。
それは自分たちで動かせる行動か。そして、次の段階へ進む確率を上げる行動か。
この2つが揃っていれば、KPIは報告のための数字ではなく、明日の行動を決める数字になります。
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