会議では、確かに決めたはずでした。
「この件は、来週までにお願いします」
本人も、「分かりました。やります」と答えている。
ところが、次の会議で確認すると、「すみません。まだできていません」
そして、もう一度期限を決める。
翌月。
また、ほとんど同じやり取りをしている。
こうなると、上司としては思います。
「本人にやる気がないのではないか」
「もっと厳しく確認した方がいいのではないか」
私も以前は、そう考えていました。でも今は、少し違います。会議で決めたことが実行されないからといって、すべてを会議の中で解決しようとすると、かえって原因が見えなくなることがあります。
なぜなら、会議で扱うべき問題と、1on1で扱うべき問題は違うからです。会議は、「組織として次に何をするか」を決める場所。1on1は、「決めたことを実行するとき、本人がどこで詰まっているのか」を整理する場所。
この二つを混ぜてしまうと、会議では一人の社員を問い詰め続け、1on1では単なる進捗確認を繰り返す。そんな状態になりやすくなります。
この記事では、会議で扱う問題と、1on1へ切り替えた方がいい問題をどう見分けるかを、私自身の経験も交えながら整理します。
会議を改善しても、すべての行動が実行されるわけではない
私の会社でも、以前は会議そのものに多くの問題がありました。
数字を報告する。
私が質問する。
私が問題を見つける。
そして最後は、私が次の行動を指示する。
社員にもっと考えてほしいと思っているのに、気づけば私が一番考え、一番話していました。そこで、会議の進め方を少しずつ変えていきました。成果KPIだけで結果を見るのではなく、その結果につながるプロセスKPIも振り返る。
成果KPIは、目指している成果がどこまで実現したかを見る数字です。プロセスKPIは、その成果につなげるために実行する行動側の数字です。
この二つを分けて見ることで、「結果が悪かった」という確認だけではなく、結果につながる行動が実際にできていたのかまで考えられるようになります。
▷【成果KPIとプロセスKPIを含むKGI・CSFとの違いは、こちらの記事で整理しています】
数字が良かった、悪かっただけで終わらず、
「なぜこの結果になったのか」
「次に何を変えるのか」
まで考える。さらに、会議の最後には、誰が・何を・いつまでに行うのかを明確にする。ここまで整えると、以前より会議はかなり前へ進むようになりました。ところが、それでも一部の行動は止まります。
会議では本人も納得している。
「やります」と言っている。
担当者も期限も決まっている。
それなのに、実行の途中で手が止まる。
ここで初めて、会議で決めることと、実際に一人ひとりが行動できることの間には、もう一つ壁があると気づきました。その壁を扱うために必要だったのが、1on1でした。
会議は「組織として何をするか」を決める場所
まず、会議の役割を整理します。会議では、
- 成果KPIを振り返る
- プロセスKPIを振り返る
- 組織として課題や原因を整理する
- 次の打ち手を決める
- 誰が・何を・いつまでに行うか決める
といったことを扱います。つまり、「組織として次に何をするのか」を決める場所です。たとえば成果KPIが思うように動いていないとします。そのとき成果KPIだけを見て、「もっと頑張ろう」で終わってはいけません。
その成果につながるプロセスKPIは、実際に実行できていたのか。逆に、プロセスKPIは実行できているのに成果KPIが動いていないのであれば、想定していたプロセスKPIと成果KPIのつながりを見直す必要があるかもしれません。
プロセスKPIは、設定して実行すれば必ず成果につながる数字ではありません。
「自分たちで動かせる行動になっているか」
「その行動が、本当に狙っている成果につながるのか」
この両方を見る必要があります。
▷【プロセスKPIを設定するときに確認したい2つの条件はこちらで整理しています】
こうしたことは、組織として考えるべき問題です。会議で数字を共通言語にしながら、「では次に何を変えるか」を考えていきます。ここまでは会議の仕事です。
1on1は「なぜ本人が動けないのか」を一緒に整理する場所
一方で、1on1が扱うものは少し違います。
会議では、「次回までにこれをやる」
と決まった。
本人も納得した。
それでも実際にやろうとすると、手が止まることがあります。その理由は、外から見ただけでは分かりません。たとえば、何から手をつければいいのか分からない。自分の判断で進めてよいのか不安。
知識が足りず、どう進めればよいか分からない。失敗するのが怖い。仕事の優先順位を整理できていない。本人自身も、何に困っているのかまだ言葉にできていない。こうした問題は、全員がいる会議ではなかなか出てきません。
本人も、「こんなことを言ったら能力がないと思われるかもしれない」と考えるかもしれません。だからこそ1on1では、行動できない本人を追及するのではなく、本人がどこで詰まっているのかを一緒に整理することが重要になります。
会議では、「何をするか」を決める。1on1では、「それを実行するために、本人はどこで詰まっているのか」を扱う。私は、この二つを分けて考えるようになりました。
同じ未実行でも、会議で扱う場合と1on1で扱う場合がある
では、どうやって分ければよいのでしょうか。私はまず、「これは組織として整理すべき問題なのか、それとも個人が実行する途中で起きている問題なのか」を見るようにしています。
会議で扱った方がいい問題
たとえば、複数の部署で同じ問題が起きている。決めたプロセスKPIそのものが実行しにくい。成果KPIとプロセスKPIのつながりが弱い。他部署との調整が必要。会社として優先順位を決め直す必要がある。
こうした問題は、一人だけの問題ではありません。組織として整理した方がよいため、会議で扱います。
1on1で扱った方がいい問題
一方、同じ行動が何度も止まっている。本人だけ進め方が分からない。会議では「大丈夫です」と言うのに進まない。本人が自信を持てていない。上司からの支援や判断が必要。
こうした場合は、会議でもう一度追及するより、個別に話した方が原因が見えやすくなります。判断基準はシンプルです。

組織の問題なら会議。
個人の詰まりなら1on1。すべてを会議で処理しようとしないことです。
会議で再追及し続けると、かえって本当の原因が見えなくなる
会議で決めたことが実行されていないと、上司としては理由を確認したくなります。
「なぜできなかったのか」
原因を確認すること自体は必要です。ただし、ここで注意したいのは、会議の場で一人の社員を深く追い続けないことです。たとえば、
「なぜできなかったの?」
「何が問題だったの?」
「それなら、なぜもっと早く相談しなかったの?」
と、全員の前で質問を重ねていく。上司としては原因を知りたいだけかもしれません。しかし、聞かれる側は次第に、
「どう答えれば怒られないか」
「何と言えばこの場を終わらせられるか」
を考えるようになります。こうなると、原因を整理するための会話ではなく、自分を守るための会話になってしまいます。

私自身も以前は、会議で数字が悪かったり、決めたことが実行されていなかったりすると、理由が分かるまで質問したくなっていました。
しかし、毎回社長が「なぜ」「ではどうする」と聞かなければ進まない状態が続くなら、個人の能力だけでなく、会議の設計そのものを見る必要があります。
▷【月次会議で社長が「なぜ」を繰り返してしまう原因と、最初の見直し方はこちらで整理しています】
会議で確認すべきなのは、組織として何が起きているのか。そして、次に何をするのか。ここまでです。たとえば、複数の人が同じところで止まっているなら、プロセスそのものに問題があるかもしれません。
プロセスKPIが実行しにくいのであれば、設定そのものを見直す必要があるかもしれません。他部署との調整が原因なら、組織として解決すべき問題です。こうしたことは会議で扱います。一方で、
「本人は分かっていると言うのに動けない」
「何度決めても、その人だけ同じところで止まる」
「全員の前では話しにくそうにしている」
という場合は、会議でさらに追及しても、本当の理由が見えてこないことがあります。
そこから先は、1on1で扱った方がよい領域です。会議では、「何をするか」を組織として決める。1on1では、「それを実行するとき、本人はどこで詰まっているのか」を一緒に整理する。
この境界を持っておくと、会議の中で必要以上に一人を追いかけることが減ります。会議ですべてを解決しようとしない。それも、会議と1on1を使い分けるうえで大切な考え方だと思います。
KPI、会議、1on1は別々の仕組みではない
私は、KPI、会議、1on1を別々に学んだり導入したりするだけでは、十分ではないと考えています。この三つはつながっています。
まず、成果KPIで、何を実現したいのかを見る。
そして、プロセスKPIで、その成果のためにどんな行動を取るのかを見る。
実行してみた結果を会議で振り返る。
成果KPIとプロセスKPIの両方を見ながら、何がうまくいったのか。
何がうまくいかなかったのか。
次に何を変えるのか。
を組織として決める。
そして、決めた行動を実行する途中で一人ひとりが詰まったら、1on1で支援する。
その後、再び行動する。
そして次の会議で結果を確認する。
流れにすると、成果KPI・プロセスKPIを実行する
↓
会議で振り返る
↓
原因と次の行動を決める
↓
個人の詰まりは1on1で支援する
↓
もう一度実行する
↓
次の会議で確認する

という循環になります。この循環が回り始めると、KPIは単なる数字の管理ではなくなります。会議も、ただ報告する場所ではなくなります。1on1も、雑談や進捗確認だけの時間ではなくなります。
すべてが、社員自身が考え、行動し、次の判断につなげるための仕組みになっていきます。
1on1を増やせば解決する、という話でもない
ここまで読むと、「では、1on1を増やせばいいのか」と思うかもしれません。私はそうは考えていません。本来、組織として決めるべきことまで1on1へ持ち込むと、今度は人によって判断がバラバラになります。
全員で共有すべき問題を、上司と部下一人だけで解決してしまう。これでは、組織に共通の判断基準が残りません。逆に、一人の社員が抱えている不安や詰まりを、毎回全員参加の会議で取り上げれば、その本人は話しにくくなります。
だから重要なのは、会議を増やすことでも、1on1を増やすことでもありません。それぞれに役割を持たせることです。会議は、組織として考える。1on1は、一人ひとりが前へ進むために支援する。
この線引きができるだけでも、両方の時間の使い方はかなり変わります。
「社員が動かない」と決めつける前に、構造を見る
会議で決めたことが実行されない。そんなとき、「またやっていない」と思う前に、一度考えてみてください。その問題は、本当に本人だけの問題でしょうか。そもそも会議で、次に何をするかまで決まっていたでしょうか。
成果KPIとプロセスKPIを見ながら、原因を整理できていたでしょうか。誰が、何を、いつまでに行うか明確だったでしょうか。そこまで決まっているのに動けないのであれば、今度は個人の詰まりを整理する必要があるかもしれません。
社員が動けないときに、「もっと主体的に動いてほしい」と求めるだけでは、なかなか状況は変わりません。人を責める前に、人が動ける構造になっているかを見る。私は、これが組織を変えるうえで、とても重要だと考えています。
目指したいのは、良い会議をする会社でも、1on1をたくさん行う会社でもありません。決めたことが実行され、その経験から人が育ち、次は自分たちで考えられる会社をつくること。KPIも、会議も、1on1も、そのための仕組みです。
そして、こうした共通言語や判断基準を一つずつ会社の中に残していくことが、私の考える「社内OS」づくりです。
会議と1on1の役割を分けることは、1on1を仕組みにする最初の段階です。そのあと何を整えるかは、こちらで整理しています。
▷【関連記事:1on1を導入したのに機能しないとき、どこから見直すか|4つの段階】
会議の次に、1on1をどう設計するか
会議で「誰が・何を・いつまでに」を決めても、実行する途中で一人ひとりが立ち止まることがあります。では、そのとき1on1では何を確認し、どのように本人の詰まりを整理すればよいのか。
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→ 会議で次の行動を決める
→ 1on1で実行途中の壁を乗り越えるという流れの中で、1on1の役割と基本的な進め方を対話形式でまとめています。
「1on1を始めたけれど、何を話せばいいのか分からない」
「進捗確認や詰問の時間になってしまう」という方は、こちらも参考にしてみてください。
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