研修をしても仕事が変わらない理由|学びを実務につなぐ3つの確認

暗い会議室の机に配布資料とバインダーが並ぶ写真。「『勉強になりました』その次を、聞いていない。」「研修を実務へつなぐ3つの確認」の文字

「勉強になりました」

以前、社員を外部研修へ送り出したあと、よく聞いた言葉です。本人にとっては、実際に勉強になっていたのだと思います。新しい知識を学び、刺激も受けている。

ところが会社へ戻ってくると、翌日の予算づくりも、月次会議での報告も、普段の仕事の進め方も、ほとんど変わりませんでした。当時の私は、「せっかく研修に行ったのだから、もう少し仕事に活かしてほしい」と思っていました。

でも、今振り返ると、社員だけの問題ではありません。私自身が、

「何を学んできたのか」

「その学びを会社のどの業務で使うのか」
「その結果、何を変えるのか」

までフォローできていなかったのです。研修を受けさせることと、仕事のやり方が変わることの間には、もう一つ必要なものがありました。それが、学びを実務につなぐ設計です。

目次

外部研修そのものが悪かったわけではない

最初にお伝えしておきたいのは、私は外部研修を否定しているわけではありません。今でも、資格取得のために必要な研修、社員全員でロールプレイングを行うような研修、グループ会社の中で昇格時に受講が必要な研修などは利用しています。

会社の外で学ぶ意味があるものはあります。専門家から直接学んだ方がよいものもあります。ですから、「外部研修をやめて、全部社内でやればいい」という話ではありません。むしろ、以前の私の反省は別のところにあります。

外部研修へ送り出したあとを、会社側がほとんど設計していなかったことです。

私は「何を学んだか」すら十分に確認していなかった

社員を研修へ送り出す。

数日後、会社へ戻ってくる。

「どうでしたか?」と聞く。

「勉強になりました」と返ってくる。

そこで終わっていました。

今なら、もっと確認すると思います。たとえば、「何が一番印象に残りましたか?」だけではなく、「その考え方は、今の仕事のどこで使えそうですか?」と聞く。さらに、「今のやり方を一つ変えるとしたら、何を変えますか?」まで話す。

ここまでやって初めて、研修で得た知識と日常業務がつながります。当時の私は、そこまでできていませんでした。学ぶ機会は会社が用意する。でも、学んだものを仕事へ変換する部分は本人任せ。そんな状態だったと思います。

これでは、仕事のやり方が変わらなかったとしても不思議ではありません。

「研修を受けた」で教育を終わらせない

社員教育では、研修へ参加したこと自体が一つの成果に見えてしまうことがあります。

受講した。

修了した。

アンケートの評価もよかった。

本人も満足している。

それでも、会社から見ればもう一つ確認したいことがあります。

「その研修を受けたことで、仕事の何が変わったのか」

です。たとえば、会議について学んだのであれば、次の会議で何を変えるのか。マネジメントについて学んだのであれば、部下との関わり方の何を変えるのか。問題解決について学んだのであれば、どの業務課題で実際に使ってみるのか。

研修テーマと日常業務をつなげておかないと、知識は知識のまま残ります。逆に言えば、外部研修であっても、受講後に会社側がここまでフォローできるのであれば、必ずしも内製化する必要はないのかもしれません。

私は今、そう考えています。

もう一つ困ったのは、学びを社内へ広げにくかったこと

ただ、私が外部研修を利用する中で、もう一つ難しいと感じたことがありました。研修を受けた本人が、学んだ内容を他の社員へ展開しようとしても難しいということです。

外部研修でもらう資料には、スライドにキーワードだけが書かれていることがよくあります。その場で講師の説明を聞いている本人には理解できます。しかし数週間後、そのスライドだけを見て内容を再現しようとすると難しい。

ましてや、研修を受けていない社員へ、その資料を使って同じ内容を説明するのはさらに難しくなります。講師が話した背景や具体例、なぜその考え方が必要なのか、どんな場面で使うのか。そうした部分は資料に残っていないからです。

ここで私は、「一人が学ぶこと」と「会社に学びが残ること」は違うと感じるようになりました。

一人が学ぶ/会社に残る を3つの軸(手元に残るもの・数週間後・他の社員へ)で対比

研修の前後で、最低限この3つを決める

今、外部研修へ社員を送り出すのであれば、私は少なくとも次の3つを確認します。

研修前 → 使う場面 → 研修後。2段目だけオレンジで「ここが一番重要」

1.何を学んでほしいのか

「この研修に参加してください」

だけで終わらせない。会社として、何を持ち帰ってほしいのかをできるだけ明確にします。

2.会社のどの業務で使うのか

ここが一番重要です。

学んだ内容を、次の会議で使うのか。

部下との対話で使うのか。

予算づくりで使うのか。

日々の改善活動で使うのか。

使う場面まで決めます。

3.受講後に、何を変えたか確認する

「勉強になりましたか?」

だけではなく、「実際に何を変えましたか?」まで確認する。一度でうまくいかなくても構いません。大切なのは、研修と実務の間を切らないことです。

私はその後、一般的なビジネススキル研修を内製化した

こうした経験から、一般的なビジネススキルについては、少しずつ社内で教育する形へ変えていきました。ただし、内製化したこと自体が重要だったとは思っていません。

大きかったのは、研修の前後まで自分たちで設計できるようになったことです。現在は、研修前にテキストを配布し、1〜2週間ほど自分で読んでもらう時間を取ります。そのあと、スライドを使った集合研修を行う。

最後に理解できているかを確認する。そして、学んだ内容を実際の業務へ組み込みます。つまり、読む
→ 学ぶ
→ 確認する
→ 仕事で使う
までを一つの流れとして考えています。

読む → 学ぶ → 確認する → 仕事で使う

以前のように、研修当日の数時間だけで社員教育を考えることはなくなりました。

AIを使うことより、教育の流れを決める方が先

現在は、教材づくりに生成AIも使っています。テキストの作成だけでなく、スライドの構成、研修で使うナレーション、理解度を確認するためのテストなども作れるようになりました。これは非常に便利です。

以前より、社内教育を準備する負担はかなり小さくなりました。ただ、ここを逆にしてはいけないと思っています。AIで教材を作れば、社員が育つわけではありません。

どれだけきれいなテキストを作っても、どれだけ分かりやすいスライドを作っても、仕事の中で使わなければ、以前の私が外部研修で経験したことと同じです。AIは、教育を作るための手段です。

その前に必要なのは、「何を学び、どの仕事で使い、何を変えてほしいのか」を決めることです。

内製化する前に、外部研修の使い方を見直してもいい

社員教育について考えると、すぐに、「外部研修か、内製研修か」という二択になりがちです。でも、私はその前に確認した方がいいことがあると思っています。

今使っている外部研修について、受講後に、

何を学んだのか。

どの業務で使うのか。

実際に何を変えたのか。

ここまで会社として確認できているか。もしできていないのであれば、まずそこを変えるだけでも、研修の効果は変わるかもしれません。

そのうえで、同じ内容を多くの社員へ広げたい、自社の事例を入れたい、会社に教材として残したい、という課題が出てきたら、内製化を検討すればいいと思います。内製化は目的ではありません。

▷【関連記事:社員教育を内製化するには|研修・教材・社内講師を仕組みにする考え方】

目的は、社員が学んだことによって、仕事のやり方が変わることです。

「勉強になりました」の次を聞く

以前の私は、「勉強になりました」という言葉を聞いて、どこか安心していたのだと思います。

会社として教育の機会を与えた。

社員も学んでくれた。

だから一つ仕事が終わった。

でも、本当に確認すべきだったのは、その次でした。

「では、明日から何を変えますか?」

ここまで聞いて初めて、研修と仕事がつながります。研修をしているのに社員の仕事が変わらない。

そんなときは、研修会社を変える前に、研修内容を増やす前に、一度、学んだことを使う場所まで決めているかを確認してみてもいいと思います。私自身、ここを十分に考えていなかったことが、社員教育を見直す大きなきっかけになりました。


社内で使える教育を、自分たちで作りたい方へ

私はその後、一般的なビジネススキル教育について、生成AIを活用しながら自社で教材を作る方法へ切り替えていきました。

Kindle『外部研修いらずの社員教育 ChatGPTで部下が勝手に育つ組織づくり』では、生成AIを使って社員教育用の教材を作り、社内へ展開していく考え方をまとめています。

「外部研修で学んでも、会社に知識が残らない」

「自社の課題に合った教材を作りたい」

「社員教育をその場限りのイベントで終わらせたくない」

という方は、参考にしてみてください。

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