1on1で同じ質問を全員にしても、うまくいかない理由

丸テーブルに置かれた1枚の資料とマグカップ2つ。1on1・育成の見出しと「「最近うまくいっていることは?」答えが人で分かれる。」、同じ質問への3通りの反応

1on1のトークスクリプトを作って、管理職に配った。

研修もして、進め方も伝えた。

それでも、話を引き出せる相手と、引き出せない相手が出る。

これは、質問の質が足りないからではありません。1on1では、同じ問いでも返ってくるものが相手によって変わるからです。

この記事では、私が自分の会社で1on1を重ねる中で見えた3通りの反応と、そこから次の問いをどう変えるかを整理します。

目次

型が効かないのは、質問が下手だからではない

以前の私は、1on1の質を上げるには「良い質問の型」を用意すればよいと考えていました。

だからトークスクリプトを作りました。社内の展開役に研修用のスライドを作ってもらい、管理職には自習してもらったうえで、集合研修まで行いました。

ところが、うまくいきませんでした。同じ型を全員に当てていたことが、そのまま原因でした。

ここで私が取り違えていたのは、型の役割です。

トークスクリプトとは、読み上げる台本ではなく、相手に合わせて選ぶための出発点です。

順番どおりに読むための紙だと考えると、うまくいかなかったときに「もっと良い質問集を探そう」という方向へ進んでしまいます。そこではありません。

会議には型が効き、1on1では型が出発点にしかならない理由

同じ「型を渡す」でも、会議と1on1では結果が変わります。

会議は、参加者が複数います。誰かが口火を切れば場が動きますし、議題と役割が決まっていれば、そこに沿って進みます。型が効く場です。

1on1は1対1です。相手が話しにくい状態のままだと、その時間はまったく進みません。代わりに話し始める人がいないからです。

つまり1on1は、扱う内容よりも先に、相手が話せる状態になっているかどうかで結果が決まります。そして話しやすい問い方や間の取り方は、相手によって違います。

会議と1on1で型の効き方が違うことを示す図。会議は誰かが口火を切れば場が動くため型が効くが、1on1は相手が話せないと時間が進まないため型は出発点にとどまる

同じ「最近うまくいっていることはある?」から、3通りが返ってきた

私は、管理職との1on1の冒頭を、アイスブレイクも兼ねて次の一言から始めています。

「最近うまくいっていることはある?」

同じ入り方をしているのに、返ってくるものは人によってまったく違いました。

過半数は、計画に沿って進んでいることを話してくれます。問いと本人がかみ合っていて、こちらが知りたいことがそのまま出てくる状態です。

ただ、そうならない相手もいました。

ある管理職は、予算で決めた計画とは関係なく、自分がいま進めている予算外の案件をたくさん話しました。

別の管理職は、進んでいる案件があるにもかかわらず、「特にありません」と、そつないリアクションで終わりました。

同じ問いです。それでも、反応がここまで分かれました。

3通りの反応は、それぞれ別のことを示している

私の会社の管理職に多かった反応は、主に次の3つでした。

同じ1つの問いに対する3通りの反応を示した図。予算外の話が多いのは計画とのずれ、特にありませんは順番や間が合わない、計画に沿って話せるのは問いとかみ合っている
  • 予算外の話が多く出る:話す材料はある。ただし会社の計画と本人の関心がずれている
  • 「特にありません」で止まる:進んでいることはあるのに出てこない。話す順番や間が合っていない
  • 計画に沿って話せる:問いと本人がかみ合っている(過半数はここ)

この3つで全部ではありません。メンバーが変われば、別の反応も出ます。ここに挙げたのは、私の会社で実際に多かったものです。大事なのは3つを覚えることではなく、返ってきたものが何を示しているかを見る癖をつけることです。

そのうえで、1つ目について注意したいことがあります。

予算外の話が多く出るケースは、問い方の問題ではありません。本人が見ている優先順位が、会社の計画とずれているという別の問題を示しています。

この場合、質問を変えても解決しません。会社として何を優先するのかを、あらためて共有するところからになります。1on1の入口が、そのずれを見つける場になっています。

2つ目についても、誤解しやすいところがあります。「特にありません」は、話すことが無いという意味ではありません。進んでいる案件があっても、そつなく返して終わることがあります。

▷【関連記事:1on1で「特にありません」と言われたとき、上司が最初に見直したいこと】

反応ごとに、次の一手が変わる

3通りが分かると、次にどこから聞くかが決まります。

予算外の話が多く出たときは、質問を変えても進みません。会社として今期どこを取りにいくのかを、あらためて共有するところからです。1on1の場で全部を揃える必要はありませんが、ずれたまま面談を重ねても、話はかみ合いません。

「特にありません」で止まったときは、質問を変えるより先にやることがあります。こちらが把握している事実を、先に渡すことです。

私の会社では、月次会議の前に、プロセスKPI・成果KPIの進捗状況・打ち手を1枚の表にして、机の上に配っています。1on1は、その表をもとに行います。

つまり、何が順調で、何が進んでいないかは、聞く前から分かっています。本人が「特にありません」と答えても、表を見ればある程度の見当はつきます。

だから、案件を1つに絞って聞けます。

  • 順調な案件について:「この案件は順調にいっているようですね。何か工夫していることがあるんですか」
  • 進んでいない案件について:「あの案件はうまく進められていないようですね。どのあたりで苦戦していますか」

広く聞くと答えられない人でも、案件を1つに絞れば話せます。この対応は、うまくいっていることを聞く場面でも、詰まりを確認する場面でも同じです。

もう1つ、事実を渡すことが効く場面があります。

出荷部門の管理職との1on1で、「何もありません」と返ってきたことがあります。プロセスKPIはきちんと達成していました。ただ、市場環境の変化で取引量が落ち、小ロットでの出荷になって物流コストが上がっていました。本人は、自分の仕事は何もうまくいっていないと感じていたのです。

私は月次会議の前に配られる資料で、その管理職が努力していることを知っていました。そこでこう伝えました。

「プロセスKPIはきちんと達成していることは知っていますよ。今は環境変化で効果が出ていない状態なので、継続して活動をお願いします」

成果が出ていないことと、行動できていないことは別です。行動している事実をこちらが知っていると伝えたことで、その後の1on1では、困っていることも含めて話してくれるようになりました。

計画に沿って話せたときは、問いと本人がかみ合っています。この場合は入口を変える必要がないので、そのまま中身を深める側へ進められます。

型は捨てず、反応を見て次の問いを変える

ここまで書くと、型がいらないように読めるかもしれません。そうではありません。

型がなければ、上司は自分が知っている面談のやり方を再現してしまいます。私の会社では、それは私が会議で「なぜ未達なのか」を繰り返していたやり方でした。管理職はそれをそのまま1on1へ持ち込んでいました。

だから型は渡します。ただし、型を1つ渡して終わりにすると、今度は「型どおりに聞いているのに話してくれない」という次の詰まりが生まれます。

上司に求めたいのは、決められた質問を順番どおりに読むことではありません。目の前の相手が話せる問い方を選べるようになることです。

そのために、1on1が終わったあとに1行だけ残すことをおすすめします。

今日はどの反応だったか

↓

その反応は何を示していたか

↓

次はどこから聞くか

これを何回か続けると、相手ごとの入り方が見えてきます。最初から複数のパターンを用意しようとするより、実際の反応から作るほうが早く進みます。

「管理職に求めすぎではないか」と思ったとき

ここで、上司の負担が重くなりすぎないかと感じるかもしれません。私も同じことを考えました。

ただ、求めているのは面談の技術ではありません。反応を見て、次の入口を1つ選ぶというだけです。相手ごとの正解を当てにいく話ではありません。

そして、この判断ができるようになるまでのあいだ、型が上司を支えます。型がある状態で迷うのと、何もない状態で迷うのとでは、出てくるものが違います。

だから順番としては、まず型を渡す。そのうえで、反応を見て変えていく。この2つを同時に求めない、ということになります。

私の会社で起きた変化

管理職は、まだ慣れないながらも、トークスクリプトを見ながら1on1を行っています。以前のような「なぜなぜ」を繰り返す形からは変わってきました。

私は年に1〜2回、社員全員と個人面談を行っています。管理職、スタッフ、作業員、派遣の方も含めた全員です。仕事上の困りごとを聞くためで、4年近く続けています。

続けているぶん、割と本音を聞けるようになっていると感じています。その面談の話題の一つとして、上司との1on1について聞いてみました。

そこで、「よく話を聞いてくれる」と答える社員が出てきました。

型を渡したことだけが効いたのではないと思っています。型を渡したうえで、反応を見て変えていく。その両方が回り始めたところです。

まとめ

1on1で同じ質問を全員にしても、引き出せる相手と引き出せない相手が出ます。原因は質問の質ではなく、相手ごとに変えていないことです。

会議には型が効きます。1on1では、型は出発点にしかなりません。

私自身、正しい質問集を1つ作れば回ると考えていた時期がありました。トークスクリプトを配って教育まで行い、それでも変わらない相手がいて、ようやく前提のほうが違っていたと気づきました。

まずは、次の1on1が終わったあとに1行だけ残してみてください。今日はどの反応だったか。そこから始められます。

1on1の位置づけや、導入から定着までの流れは、こちらで整理しています。

▷【関連記事:1on1を導入したのに機能しないとき、どこから見直すか|4つの段階】

1on1の進め方を、順を追って整理したい方へ。

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「詰まっていることを聞いても「特にありません」と返ってくる」

「相手によって、どこまで答えを渡さずに待てばいいか分からない」

という方は、参考にしてみてください。

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