成果KPI。プロセスKPI。それぞれの意味を説明して、具体例まで渡した。これなら、次の予算では各部門が自分たちでKPIを設定できるだろう。私はそう思っていました。でも、実際にはそうなりませんでした。
管理職へKPIマネジメントのテキストを渡し、個別に読んでもらったものの、予算を作る段階になると、プロセスKPIを十分に設定できなかったのです。
当時の私は、「一度説明したのだから、あとは実務で使えるだろう」と考えていた部分がありました。でも翌年、月次会議を続ける中で、もう一度この問題に向き合うことになります。成果として欲しい数字は置いてある。
でも、その成果につなげるために、日々どんな行動を追うのかが曖昧でした。つまり、成果KPIはあっても、プロセスKPIが十分に機能していなかった。
そこで私は、KPIそのものではなく、KPIをどう社内へ教えるかから見直すことにしました。
成果KPIを決めても、行動までは変わらなかった
たとえば、売上や利益など、最終的に欲しい成果を数字にすることは、比較的イメージしやすいと思います。一方で、難しかったのがプロセスKPIです。
成果を出すために、社員自身が働きかけることのできる行動やプロセスの中から、何を数字として追うのか。ここは、単に用語の意味を知っているだけでは決められません。
最初の教育でも、成果KPIとプロセスKPIの違いや、具体的な事例は説明していました。それでも、予算という実務の中で、適切なプロセスKPIを考えるところまでは、十分につながりませんでした。
翌年の月次会議で、各部門の活動を確認していると、成果につながる行動が十分に設定されていないことが見えてきました。そこで、社内でKPIの展開を手伝ってくれていた社員にも聞いてみました。
すると、やはり、「プロセスKPIに何を設定したらいいのか分からない」という声が多いことが分かりました。ここで私は、一度教えた内容を、もう一度やり直すことにしました。
一度教えたから、できるはずとは考えない
最初の教育では、管理職へテキストを渡し、それぞれに読んでもらっていました。ただ、テキストを渡しただけでは、読む深さも、理解できる範囲も、人によって違います。文章を一度読んで、すぐ実務へ落とし込める人もいます。
一方で、内容は分かっても、自分の部門では何を設定すればいいのか、そこまで結びつかないこともあります。これは、本人の姿勢だけの問題ではないと思っています。
こちらが「読んでもらうこと」を、いつの間にか「使えるようになったこと」と同じに考えていた。そこにも問題がありました。そこで翌年は、プロセスKPIに重点を置いて、教育そのものを組み直しました。
プロセスKPIに絞って、教材を作り直した
二回目の教育では、KPI全般をもう一度広く説明するのではなく、特につまずいていた、プロセスKPIをどう設定するかを中心にテキストを作りました。どういうものをプロセスKPIとして考えるのか。成果KPIとどうつながるのか。
どんな具体例があるのか。実際に自分たちが設定するときに、考える材料になるようにしました。対象者も、管理職だけにはしませんでした。今回は、実際に業務を進めるスタッフも含めて教育することにしました。
KPIを管理職だけの言葉にするのではなく、実際に行動する人も含めて、同じ考え方を共有した方がいいと考えたからです。

テキストを配って、約10日後に集合研修をした
教育の進め方も変えました。まず、私が作ったテキストを事前に配布しました。そして、約10日間、各自で読んでもらう時間を取りました。そのあと、社内の展開役が、テキストをもとに研修用のスライドを作りました。
その展開役自身が講師となり、集合研修を行いました。さらに、研修を受けて終わりにはせず、その場で理解度テストも行いました。流れとしては、テキストを事前に読む → 集合研修で改めて学ぶ → 理解度テストで確認するという形です。
私は、この時点でも、最初にテキストだけを渡していたときより、座学としての理解はかなり進んだと感じました。ただ、今振り返ると、それだけだったら、また時間とともに忘れられていたかもしれません。
今回、特に良かったと思っていることがあります。
研修の直後に「本番」があった
集合研修をした時期は、ちょうど予算作成の前でした。つまり、プロセスKPIについて学んだあと、すぐに、自分たちの部門のプロセスKPIを実際に設定しなければならなかったのです。これは大きかったと思います。
研修で、「なるほど」と聞いて終わることができません。数日後には、自分たちの予算資料の中に、成果KPIとプロセスKPIを入れる必要があります。何を設定するのか。本当に成果につながるのか。
自分たちで働きかけることのできる指標になっているか。実際に考えなければなりません。だから、社員も管理職も、研修内容を自分たちの仕事に置き換えて考えることになります。
私はここで、教育の直後に使う場面を置くことの重要性を改めて感じました。
研修講師が、そのまま社内の相談先になった
もう一つ、想定以上に大きかったことがあります。今回の集合研修では、社内の展開役が講師を務めました。その結果、社員や管理職の中に、自然と、「KPIの設定で困ったら、この人に聞けばいい」という共通理解が生まれました。
予算を作っていた約2週間、スタッフや管理職が、頻繁に展開役のところへ相談に行くようになりました。
「このプロセスKPIでいいだろうか」
「この成果につなげるなら、何を追えばいいだろうか」
「この指標は自分たちでコントロールできるだろうか」
研修で分からなかったことを、実際の予算を作りながら確認する。つまり、集合研修のあとに、OJTが自然に始まったような状態です。これは、私自身がすべての部門から相談を受ける形とは違いました。
KPIを教えた人が、そのまま社内の相談先になる。会社の中に、KPIを支援できる人ができたことも、定着には大きかったと思っています。
最終確認では、7〜8割程度はそのまま使えた
もちろん、一回の教育ですべて完璧になったわけではありません。予算書へ載せる前に、私も最終チェックをしました。その結果、私が修正したのは、全体の2〜3割程度でした。
逆に言えば、7〜8割程度は、各部門と展開役が考えた内容で妥当だと判断できる状態になっていました。最初の頃は、プロセスKPIそのものを設定することに苦戦していました。そこから考えると、大きな変化でした。
ただ、私はこの結果を、「良いテキストを作ったから」だけだとは考えていません。いくつかのものが、つながったからだと思っています。
KPI教育で変えたのは、教材だけではなかった
振り返ると、最初と二回目では、教育の仕組みそのものが違いました。最初は、テキストを渡す → 各自で読むが中心でした。

私は、プロセスKPIが以前より設定できるようになった理由は、この一連の流れにあると思っています。
一度聞いた。
一度読んだ。
だから、あとはできるはず。
ではなく、理解して、実際に使い、困ったところで支援を受ける。
そこまでつなげる必要がありました。
「共通言語」にするなら、管理職だけに教えない
今回、もう一つ変えたのは、教育する対象です。最初は、管理職を中心にKPIを理解してもらおうとしていました。でも、実際にプロセスKPIとして設定するのは、日々の仕事に近い行動です。
そのため、管理職だけでなく、スタッフ側も考え方を理解していた方が、実務へつなげやすくなります。成果KPIについて話す。プロセスKPIについて話す。そのとき、社員によって言葉の意味が違えば、議論がかみ合いません。
逆に、同じ言葉を、同じ意味で使えるようになれば、会議や予算作成の中でも話しやすくなります。
私は、KPIを会社へ導入するというのは、数字を決めることだけではなく、会社の中で同じ言葉を使って、成果と行動について話せる状態を作ることでもあると思っています。

プロセスKPIを教えるなら、すぐ使う場面まで決める
社員教育をすると、どうしても、研修当日の反応を見てしまいます。
理解してくれた。
質問も出た。
テストの点数も悪くなかった。
もちろん、それらも大切です。でも、KPI教育で私が本当に確認したかったのは、そのあとでした。実際に、自分たちの業務でプロセスKPIを設定できたか。です。
最初の頃の私は、KPIについて説明すれば、社員や管理職が実務でも使えると思っていました。でも、そう簡単ではありませんでした。プロセスKPIという言葉を知ること。具体例を見ること。
そして、自分たちの仕事の中で、何をプロセスKPIにするかを決めること。この間には、かなり距離があります。私たちの場合は、その距離を、教育だけではなく、実際の予算づくりと、展開役によるOJTで埋めていきました。
だから今は、新しい考え方を社員へ教えるとき、「研修をいつやるか」だけではなく、「そのあと、いつ使ってもらうか」まで考えるようにしています。KPIについて教育したのに、予算や月次会議では以前と変わらない。
そんな場合は、社員が理解していないと考える前に、一度、教育の後ろまで確認してみる。
実際に使う機会があるか。
分からないときに相談できる人がいるか。
使ってみた内容を確認する機会があるか。

私は、そこまで含めて、KPIを会社へ定着させる仕組みなのだと思っています。
KGI・CSF・成果KPI・プロセスKPIという4つの言葉の整理は、こちらでまとめています。
▷【関連記事:KPIが「成果指標」しかない会社が最初に整理すべき4つの言葉】
プロセスKPIそのものを見直したい方へ
今回の記事では、プロセスKPIを社内へどう教え、実務へつなげたのかを書きました。一方で、そもそも設定しているプロセスKPIが、成果につながる内容になっているかも重要です。
私自身、月次会議を続ける中で、プロセスKPIを置いていても、その指標が成果につながっていなければ意味がないと感じるようになりました。
▷【関連記事:動けないKPI、効かないKPI|プロセスKPIが満たすべき2つの条件】

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