社員教育の教材を作るとき、以前の私は、「必要なことが書いてあれば、それでいい」と考えていました。
内容が正しい。
必要な知識も入っている。
社員に学んでほしいことも書いてある。
それなら、教材として成立していると思っていたのです。でも、実際に社員へ渡してみると、内容が正しいことと、読んでもらえることは別でした。さらに言えば、読んでもらうことと、内容を理解して仕事で使ってもらうことも違います。
私は社員教育の教材を作りながら、少しずつ「何を書くか」だけではなく、「どういう形なら受け取りやすいか」を考えるようになりました。その中で行き着いた一つが、対話形式のテキストでした。
最初はWeb上の情報をまとめて教材にしていた
社員教育を社内で行うようになった当初、私はWeb上の記事などから必要な情報を集め、それをまとめて教材にしていました。
学んでほしいテーマについて調べる。
必要な部分を集める。
それを社員へ渡す。
まずはそこから始めました。
もちろん、情報そのものは役に立ちます。ただ、一般向けに書かれた情報を集めただけでは、そのまま自社の社員教育に使いやすい教材になるとは限りません。自分たちの仕事と、どう関係するのかが分かりにくいこともあります。
そこで私は、必要な内容を自分たちに合う形でまとめたテキストを作るようになりました。
生成AIで、教材を作りやすくなった
生成AIを使うようになってから、教材づくりは以前より進めやすくなりました。
誰に、何を学んでもらいたいのか。
どんな順番で説明するのか。
どんな事例を入れるのか。
そうした条件を整理しながら、社員教育用の文章を作れるようになったからです。最初は、一般的な解説記事のような、通常の文章でテキストを作っていました。内容も整理されている。伝えたいことも入っている。
Web上の情報を集めていた頃より、自社で使いやすい教材になりました。それでも、社員教育を続けていく中で、もう一つ気になることが出てきました。内容が整理された文章でも、それだけで最後まで読みやすいとは限らない。ということです。
「読んでくれない」で終わらせたくなかった
まとまった文章を社員へ渡して、思ったように読まれなかったとき、「もっとしっかり読んでほしい」と考えることは簡単です。でも私は、そこを社員側だけの問題にはしたくありませんでした。社員には、普段の仕事があります。
その中で、ある程度のボリュームがある教育用テキストを読むことになります。しかも、本人にとって初めて学ぶテーマであれば、どこが重要なのかも最初は分かりません。
書いてある内容が正しくても、説明文がずっと続けば、読み進めにくいこともあります。だとすれば、見直すべきなのは、社員の姿勢だけではありません。こちらが、どんな形で教材を渡しているか。
そこにも改善できることがあると思いました。
そこで、平叙文から対話形式へ変えた
そこで私は、社員教育用のテキストを、対話形式で作るようになりました。
たとえば、一人が疑問を投げかける。
もう一人が答える。
すると、さらに疑問が出てくる。
「なぜですか?」
「それは、実際の仕事ではどういうことですか?」
「今までのやり方と何が違うのですか?」
そんなやり取りを通して、少しずつ理解を深めていく形です。説明だけを続けるのではなく、疑問と回答を繰り返しながら読み進められる形に変えました。すると、通常の文章で作っていた教材よりも、社員に読んでもらいやすくなりました。
この経験から、私は教材についての考え方が変わりました。
教材は「情報を入れる箱」ではない
教材を作る側にいると、どうしても、「何を書くか」を優先しがちです。
この知識も必要。
この説明も入れたい。
この事例も伝えたい。
そうして、必要な情報をできるだけ詰め込もうとします。でも、読む側からすると、大切なのは情報量だけではありません。自分が理解しながら読み進められるかです。
対話形式にすると、読む人が途中で感じそうな疑問を、文章の中にあらかじめ入れられます。
「そもそも、なぜ必要なのか」
「具体的にはどういうことなのか」
「自分の仕事と何が関係するのか」
こうした疑問を一つずつ拾いながら、説明を進めることができます。つまり、情報を並べるだけではなく、理解する順番まで教材の中で設計できるようになります。

私は、ここに対話形式の良さを感じています。
対話形式なら何でも伝わるわけではない
ただし、教材を対話形式に変えれば、それだけで社員教育がうまくいくわけではありません。対話形式は、あくまで伝え方の一つです。もともとの内容が整理されていなければ、対話にしても分かりにくい。
仕事と関係のない内容なら、読みやすくなっても、実際の行動にはつながりません。以前の記事でも書いたように、研修や社員教育では、何を学ぶかだけではなく、学んだことをどの業務で使うのかまで考える必要があります。
▷【研修をしても仕事が変わらない理由|学びを実務につなぐ3つの確認】
その土台があったうえで、同じ内容を伝えるなら、どんな形で渡した方が理解しやすいのか。そこまで考える。私にとって、対話形式はそのための一つの方法です。
教材を作ったところを「完成」にしない
以前の私は、教材ができると、そこで一つ仕事が終わったような感覚がありました。
必要な情報を調べた。
文章にした。
社員へ渡した。
これで教育の準備はできた。
でも今は、その先を見るようになりました。
実際に読んでもらえているか。
内容を理解できているか。
どこで分かりにくくなっているか。
仕事の中で使えているか。
教材は、作った側が「完成した」と思えば終わりではありません。受け取る側が理解し、仕事につなげられる形になっているか。そこまで見て、必要なら改善していく。社員教育も、一度作って終わるものではないと思っています。
AIで作れることと、社員に伝わることは別
現在は、社員教育の教材づくりに、生成AIを活用しています。テキストだけではなく、スライドの構成、研修で説明する内容、理解度を確認するためのテストなども、AIを使って作れるようになりました。
教材を作る負担は、以前より小さくなっています。ただ、AIを使うほど、むしろ意識した方がいいことがあります。AIが文章を作れることと、その文章が社員に伝わることは別です。
生成AIは、条件を渡せば、短時間で大量の文章を作れます。でも、そのまま社員へ渡せば教育になる、ということではありません。
通常の文章がいいのか。
対話形式がいいのか。
事前にテキストを読んでもらうのか。
その後に集合研修をするのか。
理解できているかを、どのように確認するのか。
そして、学んだことを、どの業務で使ってもらうのか。
そこは、教育する側が設計する必要があります。

AIは、社員教育を作るための非常に便利な道具です。でも、教育そのものを設計してくれるわけではありません。
「正しい教材」から「伝わる教材」へ
社員教育の教材を作り始めた頃、私は正しい情報を集めることを重視していました。そこから、生成AIを使って、自社で必要な内容を文章にするようになりました。さらに、通常の文章から対話形式へ変えてみました。

少しずつ形を変えてきた中で、私が感じていることがあります。教材は、正しいことを書けば完成ではない。大切なのは、その内容を、社員が理解できる形で渡せているかです。
社員がなかなか読んでくれない。
内容が十分に伝わっていない。
そんなとき、すぐに本人の意欲の問題にしない。まず、こちらが渡している教材を見直してみる。
内容を理解しやすい順番になっているか。
途中で出てきそうな疑問に答えているか。
自分の仕事とのつながりが見えるか。
そして、そもそも読み進めやすい形になっているか。
教育する側にも、改善できることはあります。私は、社員教育を続けながら、教材そのものも改善していけばいいと思っています。
生成AIを使って、社員教育そのものを内製化したい方へ
今回の記事では、私が社員教育の教材を、Web上の情報をまとめた資料
→ 生成AIで作った通常の文章
→ 対話形式のテキストへと改善してきた経験をご紹介しました。
対話形式への変更は、私が実際に社員教育を続ける中で行った改善の一つです。
一方で、「そもそも生成AIを使って、社員教育用の教材をどう作ればいいのか」というところから知りたい方には、Kindle『外部研修いらずの社員教育 ChatGPTで部下が勝手に育つ組織づくり』で、生成AIを使った教材作成の基本的な流れをまとめています。
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