予算をつくる時期になると、間接部門の目標設定だけが毎年こじれる。
営業や製造は、売上や生産量から目標を組み立てられます。ところが経理や総務になると、出てくるのは「経費を◯%下げる」ばかりで、去年より下げる余地がもう残っていません。
担当者も困った顔をしています。この行き詰まりは、KPIの立て方が下手だから起きているのではありません。会社が何を成果とみなすか、つまりKGIの置き方が偏っているために起きています。
この記事では、間接部門にKPIが置けなくなる仕組みと、どこから見直すかを整理します。
間接部門がKPIを作れないのは、担当者の問題ではない
KGIとは、会社が最終的に何を達成したいかを示す、一番上の目標です。KPIは、そのKGIへ向かう途中を測る数字にあたります。
つまり順番があります。
KGIを決める
↓
そこへつながる道筋を分ける
↓
部門ごとのKPIを置く
この順番で見ると、間接部門の詰まりがどこにあるかが分かります。上にあるKGIが利益しかない場合、下にぶら下げられる数字も、利益に直接効くものだけになります。
営業なら受注や訪問件数、製造なら生産性や不良率と、いくらでも置けます。一方で私の会社では、経理や総務が利益への貢献を数字にしようとすると、出てくるのは経費削減か効率化でした。あなたの会社の予算書はどうなっているでしょうか。

つまり、間接部門に置ける目標の幅は、担当者の力量ではなく、会社のKGIの幅で決まっています。
利益だけをKGIにすると、貢献が「削る」にしか翻訳されない
削減そのものが悪いわけではありません。無駄が残っているうちは、それも立派な成果です。
問題は、削減しか置けない状態が何年も続いたときに起きます。削減しか置けない期間が続くほど、目標は前年の焼き直しになっていきます。
このとき間接部門が失うのは、目標の数字だけではありません。自分たちの仕事が何のためにあるのかという説明を、会社の言葉で語れなくなります。
働きやすさ、定着、社内の信頼、品質の安定。こうしたものは、確かに会社を支えています。それでもKGIに入っていなければ、目標の欄に書く場所がありません。
制度としては「あなたたちの仕事は評価の対象外です」と言っているのと同じです。誰もそう口にしていなくても、目標設定の書式がそう伝えてしまいます。
削減を目標にしてよい場合と、そうでない場合
ここで一つ分けておきたいことがあります。削減を目標にすること自体は、間違いではありません。
判断の目安は、削り代が残っているかどうかです。
- 手をつけていない無駄がある間は、削減が成果になる。金額も出るので、目標としても成立する
- 削り代がほぼ尽きたあとは、同じ物差しを当て続けると、削ってはいけないものへ手が伸びる
危ないのは、この切り替えの時期が見過ごされることです。削減目標は前年と同じ形で書けてしまうため、続けるほうが楽に見えます。
目標の中身が前年と同じで、金額だけが小さくなっていたら、切り替えの時期が来ていると考えたほうがいいと思います。
私の会社で、会議中に聞こえてきた一言
私がKPIマネジメントを導入したとき、会社のKGIは利益に関する項目だけでした。
そのため間接部門にできることは、外注費の単価の見直しや、社員の福利厚生費の削減といった、削ることだけでした。それでも導入してからしばらくは、目標を達成してくれました。
無理をさせている自覚はありました。
次の予算をつくる時期のことです。会議で次年度の予算の話が出たとき、間接部門の社員が、となりの人と話しているのが聞こえました。
「私たちの部署はKPIを作るのが難しい」
これはまずい、と思いました。削ることしか選択肢がなければ、KPIを考えようがありません。無理をさせていたことと、この一言が、そこでつながりました。
私は目標の立て方を教える前に、間接部門のスタッフには目標設定そのものが難しい状態だったのだと気づきました。
KGIに「削る以外の価値」を1つ入れた
そこで私は、会社のKGIに従業員満足度を加えました。
きっかけは、数年に1度、外部機関に依頼している調査でした。その結果から、社員のエンゲージメントが比較的低いことが分かっていました。
これは、間接部門が引き受けるのにふさわしいテーマです。
あわせて、間接部門の社員向けに、従業員満足度の向上をテーマにしたテキストを1冊作って渡しました。その人たちのためだけに作ったものです。伝えたかったことは一つでした。
コストダウンでなくても、間接部門は会社に貢献できる。
たとえば、次のような取り組みが出てきました。
- 他部署の社員も加えたミーティングを開き、改善策を考える
- 会社のイベントを企画し、終わったあとに社員へアンケートを取る
- 社員同士のコミュニケーション研修を企画する
成果と呼べる数字はまだ出ていません。それでも、目標が「何を削るか」から「何を良くするか」に変わり、社員が生き生きしはじめたと感じています。
明日からできる見直しの順番
間接部門の目標設定が毎年こじれているなら、担当者と話す前に確認してほしいことがあります。
自社のKGIに、削る以外の価値が1つでも入っているか。
入っていなければ、間接部門がどれだけ考えても、出てくる案は削減に寄ります。順番としては、こうなります。
KGIに削る以外の項目を1つ加える
↓
その項目を担当する部門を決める
↓
そこへ向かう行動をKPIとして置く

加える項目は、すでに測っているものから探すのが早いです。私の場合は、外部機関の調査がすでにありました。離職率、社内アンケートの結果、手続きにかかる日数など、社内にある数字で足ります。新しく測り始める必要はありません。
1つ加えるだけで、間接部門の目標は「削る」以外の方向へ動き出します。
KGIに置いてよいのか、私もためらいました
最初に「KGIに設定してはどうか」と自分で口にしたあと、本当に置いてよいのかというためらいが残りました。利益から遠い指標を、会社の一番上の目標にすることになるからです。
考えが変わったのは、展開役が社員へこう説明しているのを聞いたときでした。
従業員が満足することで仕事へのパフォーマンスが上がり、顧客満足度の向上につながり、会社の利益に返ってくる。
聞いている社員も、納得している表情でした。それを見て、間違いではなかったと確信しました。
すぐに成果の出る指標ではないかもしれません。それでも、大事な指標だと感じています。
今回、私が加えたのは従業員満足度でした。削る以外の価値は、これ以外にもあるはずです。自社なら何を置けるかは、ぜひ考えてみてください。
まとめ
間接部門にKPIが置けないのは、担当者の力量の問題ではありません。会社のKGIが利益だけだと、その部門の貢献が「削る」にしか翻訳されないからです。
KPIの立て方を教える前に、置ける目標が用意されているかを見てください。私は、この順番を間違えていました。
KGI・CSF・成果KPI・プロセスKPIの違いや、KPIを導入するときにつまずきやすい点は、こちらで整理しています。
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