月次会議が終わったあと、また同じことを自分だけが考えていた、と感じることはないでしょうか。
こうした感覚が積み重なると、社長は次第に「結局、自分が抱えるしかない」という孤独を感じるようになります。
この記事の結論は、その孤独の原因が社長の能力や覚悟ではなく、会社を社長一人に依存させず自律的に動かしていくための仕組み、つまり「社内OS」がまだ整っていないことにある、ということです。社内OSという視点を持つと、自社で何から手をつければいいかが見えてきます。
社員の意識ではなく、見ている景色がずれている
社長が会議で同じことを繰り返し聞いてしまうとき、つい「もっと考えてほしい」「当事者意識を持ってほしい」と感じます。私自身も、何度もそう感じてきました。
ですが、これは社員の意識や能力の問題ではなく、社長と社員が見ている時間軸が違うことが一因です。社長は足元だけでなく会社の数年先も見て判断しています。社員は今日・今週・今月の現実を見て動いています。このズレ自体は悪いことではありません。問題は、このズレを埋める構造が会社の中にないことです。
社長の頭の中にある危機感や判断基準が、組織の中で共有される形になっていなければ、いくら言葉を尽くしても、社員にとっては「また言われた」という受け止めにしかなりません。
社内OSとは何か——会議OSと育成OSという2つの仕組み
私は、社長一人に依存せず会社が自律的に動いていくための仕組み全体を「社内OS」と呼んでいます。社内OSは、ひとつの完成したフレームワークではなく、いくつかの仕組み(OS)の集合です。
その中でも、今の私の会社で動いているのは、主に「会議OS」と「育成OS」の2つです。
会議OSは、会社の意思決定と情報共有を行う場である会議そのものを機能させる仕組みです。私の会社では、会議OSは次のような手法で構成されています。
- KPIマネジメント:会議で結果・行動・原因・打ち手を話すための共通言語
- ファシリテーション:会議の中で議論を活性化させる進め方
- 1on1:会議の外で個人をフォローし、会議の内容を行動につなげる仕組み
育成OSは、人を育てる仕組みです。まだ名前として固まったものではありませんが、私の会社では次のような手法で構成されています。
- 研修資料の内製化:外部研修に依存せず、自社の課題に合わせた教材を社内でつくる
- 関係者全員への一気教育:一部の幹部だけでなく、関係する社員全員に同じ内容を同時に伝える
- 社員同士の教え合い:教わった社員が、今度は教える側に回る
この2つのOSは、今の私の会社で体系化が進んでいる部分です。経営改革を進めていく中で、今後さらに別のOSが増えていく可能性もあります。社内OSは、完成した型を当てはめるものではなく、自社の状況に合わせてつくり、育てていくものだと考えています。

私の会社で起きたこと
以前の私の会社では、予算を年度の早い時期に達成してしまう部門がありました。ある管理職には、「予算達成ありがとうございます。残りの期間で新たに何に取り組むか、来月教えてもらえますか」とお願いしていました。
経営の立場からすれば自然な問いでしたが、相手の受け止め方はまったく違いました。翌月も、翌々月も、私は同じお願いを繰り返すことになりました。相手にとっては「達成したら終わり」、私にとっては「達成してからが始まり」だったのです。
このとき私が痛感したのは、自分だけが先を見ていて、周囲は今の達成だけを見ている、という景色の差でした。
そこで私は、会社の将来損益や人件費の伸びといった試算を、自分一人で抱えるのをやめました。経理の管理職にその試算を担ってもらい、その管理職自身の言葉で社員に共有してもらう形に変えたのです。社長が答えを見せるのではなく、組織の中に「現実が見える材料」を置く。この変化が、後の会議OSや育成OSにつながっていきました。
すぐに大きな変化が起きたわけではありません。ただ、自分たちで試算し、自分たちの言葉で共有するようになってから、社員の側に少しずつ危機感が生まれ、私の話を「理解しよう」とする姿勢が見え始めました。
仕組みが変わると、社長の役割も変わる
以前の私は、会社の状況や将来の見通しを自分の中にしまい込み、必要なときに自分の言葉で説明する役割を担っていました。
仕組みを変えてからは、私の役割は「説明する」ことから、「組織の中に置かれた材料を確認し、必要であれば判断を加える」ことに変わりました。これは、社員を信頼できるようになったから起きた変化ではありません。仕組みが変わったことで、信頼できる状態が後から生まれた、という順番です。
社内OSを整えるというのは、社長が抱えている役割の一部を、仕組みの中に移していく作業だと言えます。
最初の一歩|このブログで扱うこと
自社の社内OSを整えるといっても、最初の一歩は会社の状態によって変わります。私のブログでは、社内OSを構成する仕組みについて、次のカテゴリで扱っていきます。
会議改革
会議OSそのものをテーマにしたカテゴリです。月次会議で社長が「なぜ」を繰り返してしまう理由や、報告フォームの設計、会議の頻度・時間設計など、会議を機能させるための見直し方を扱います。
KPIマネジメント
会議OSの中で使う共通言語であるKPIについて扱うカテゴリです。KPIを作っても現場が動かない理由から、評価制度との関係まで、会議で実際に使われるKPIの設計と運用を扱います。
1on1・育成
会議の外で個人をフォローする1on1と、育成OSの土台となる教育の内製化について扱うカテゴリです。1on1の進め方や、研修への投資が組織の変化につながらない理由などを扱います。
まとめ
社長が会議で同じことを繰り返してしまうのも、研修を行っても組織が変わらないのも、根性や意識の問題ではなく、会社を自律的に動かしていく仕組みがまだ整っていないからです。これは、社内OSという視点を持って、会議・KPI・1on1・教育のひとつひとつを見直していくことで変えていけます。
自社の組織が今どの状態にあるかは、無料の管理職自走度チェッカーで確認できます。いくつかの質問に答えるだけで、今どこを見直すと効果が出やすいかが分かります。
